100 / 127

第100話

当日ーー 発砲音が遠くで鳴り響いた。 「中に入るぞ。」 吹雪さんの一言で、俺、真斗、副会長、そして瀬野の組員の1人が高い塀を乗り越えて屋敷に忍び込んだ。 離れは母屋から大分距離があるらしい。組員総手で瀬戸組を対峙しているらしく、あたりに人は見当たらない。 「何があるか分かりません。別行動は控えましょう。」 離れは白い建物。 和を重んじる母屋とは違い、その雰囲気は洋。 それも、かなりの大きさだ。 離れとは言い難い建物に圧倒される。ただ、皆思うのはただ一つ。 夏乃がここにいますように。 「開けるぞ。」 俺らはその言葉に頷き、吹雪さんはそれを確認してから扉を開けた。 「これは…想定外、ですね。」 広い玄関を覆いつくすくらいの人がそこにはいた。 「いや、まだこれは最悪じゃねぇ。」 相手はどうにも瀬野組の奴らではなさそうだ。まぁつまり飛び道具はもっていない。 その点、最悪ではないということ。 「人の数では圧倒的に負けてんだろ。」 「別行動はさける方向でしたが、仕方がありません。雪さん、それに野原多々。先に行きなさい。」 「えっ、なんで。」 「流石に1人で抑えられる気はしませんが、3人ならなんとかなるでしょう。瀬戸真斗のいる側に組員1人つく約束です。となると、これが一番賢い分け方でしょう。」 「いや、そうじゃなくて…。この人数を3人って…。」 「文句言ってねぇで早く行け。俺は別に構わねぇよ。」 目の前にいる人数に圧倒され、3人を置いていくのに躊躇う。 「多々、行くぞ。大丈夫だと言っているんだ。信じて任せよう。ここでもたもたしていたら夏乃が連れ出される可能性だってある。」 「はい。…よろしくお願いします。」 「こちらも終わり次第向かいます。」 頷いて真っ直ぐ階段の方へ向かう。 もちろんそう簡単には行かせて貰えなく、雪さんが目の前の敵をはっ倒しながら俺は後ろでついて回った。

ともだちにシェアしよう!