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第102話
「吹雪さん、先行ってください。あとは俺だけで大丈夫です。」
「お前一人で俺を倒せるつもりか?」
その問いに答える前に俺は拳を振り上げた。
殴る蹴るの攻防。
俺はすでに息が絶えている。
夏乃に付き合って喧嘩はするけど、それほど体力がある方じゃないし、夏乃みたいに化け物のような強さは持ち合わせてもない。
吹雪さんは夏乃を見つけただろうか。
はっ、これじゃあ負けフラグだ。
でも、流石にやばいか…。
あっ…。
「おいおい、そろそろやばいんじゃないか?」
「ははっ、そうだな。でも俺はさ、夏乃と違ってなんでも真っ正面に向かっていくような人間じゃないんだよ。ずる賢いタイプなんだ。」
そう、夏乃にみたいに真正面から相手を対峙するような人間じゃない。やばかったら普通に逃げるし、セコいこと卑怯なこと簡単にする。
「あ?」
「どちらかというとお前と同じような人間だってこと。」
ふっと笑って、西山が後ろから殴られるところを見つめた。
「意外と良い性格してるんですね。」
副会長は倒れた西山を見つめながら言った。西山を後ろから殴ったのは副会長だ。
「さっき副会長が見えたので。」
ニコニコと笑って言う。思いの外、早く片付けられた。真斗は口をへの字に曲げている。そういえば、真斗も馬鹿正直に真っ直ぐ突入するタイプだからなぁ。
「こいつは昔から卑怯者だ。」
「酷い言われよう…。そう言えば副会長眼鏡はどうしたんですか?」
「ああ、喧嘩の時は邪魔なので捨てました。」
捨てたって…。命より大切そうにしてたのに…。ってか、メガネなくて前髪あげてる副会長ってすごい印象変わる。
「それで、夏乃は?」
「吹雪さんが探しに行ってます。」
「そうですか。私達も探しに行きましょう。そろそろ約束の時間です。」
約束の時間。
それは警察が突入する時間を指す。その時間になると瀬野組は撤退。俺らもここから去らないといけなくなる。
夏乃は警察が見つければ保護。
ただ、後々面倒になる可能性があるので俺たちで探し出したいのが本音だった。
そしてーー
その後、無事吹雪さんから夏乃が見つかったと言う連絡を受け取った。
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