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第103話
「まぁ、そんな感じで夏乃を見つけ出したってわけだ。」
俺はある程度掻い摘んで夏乃に話をした。勿論、吹雪さんが元不良だとかそんな話は省いた。
「じゃあ、あいつはもともと来る予定じゃなかったんだな。」
「あいつって、会長のことだろう。そりゃあ、な。会長は怪我人だし。連れて行けるはずがないだろう。」
会長は夏乃を助けるために個人で動いていた。俺たちにそれを察知させなかったことはさすがだ。
その代わり、バレた後は結構なお灸を注がれたらしいが。今はほぼほぼ監禁状態。副会長の話だと退屈そうに病室で過ごしているらしい。
「そうか…。俺は結局、護るどころか護られてしまったな。情けない。」
「夏乃、お前が俺たちを護りたかったように、俺たちもお前を護りたかっただけだ。お前がもしも情けないと言うのであれば俺はもっと情けない。弟一人に負担をかけ、弟が助けを求めても一人では助けることも出来なかった。兄として情けない。」
「ちがっ…。」
「お前が違うと言ってくれるように、俺もお前を情けないとは思わない。だから、互いに卑下し合うのは良そう。」
吹雪さんは夏乃に笑いかけ、夏乃は薄ら瞳に涙を浮かべた。
これは、2人で居させるべきだろうな。なんか前にもこんなことあったな。副会長と目線で意思疎通をして立ち上がる。
「我々は一度帰ります。あとは雪…いえ吹雪さんと一緒に過ごしてください。今度は雫や敬吾を連れてきます。ああ、あと、もうそろそろ文化祭ですから、早く退院して仕事手伝って下さいね。」
扉を開けて、副会長と俺は病室から出る。夏乃のことは後は吹雪さんに任せれば大丈夫だろう。
多々side end
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