結局、文化祭の準備でどたばたしたせいで、俺と大和が2人きりで話せたのはあれ以来。 んで、文化祭。 文化祭当日ももちろん仕事があって、殆ど話すことはできない。いつになったら俺はあいつと話せるんだろう。 「夏乃、夏乃。ほらっ、これ着ろよ。」 「なんだこれ。」 「メイ…ひぃ…。嘘、嘘。嘘に決まってんだろ。」 俺のクラスはコスプレ喫茶らしい。くだらない。ふざけてメイド服を持ってきた多々には鉄槌を下した。 「にしても、まだ告白してないのか。」 「うっせぇ、だまれ。」 「おいっ、どこに行くんだよ。」 「真斗んとこ。」 「あっ、俺も行く。」 「あっそう。」 数少ない休憩時間を真斗に当てるのはもちろん理由がある。あの、クソバカアホにまだ礼を言ってないからだ。 『真斗は高校卒業と同時に若頭として頑張るらしい。その準備でお前の見舞いには来れないってよ。』 入院中に聞いた話。 あいつのこともまだ蹴りがついてねぇ。 「真斗のクラスは焼き鳥だってよ。まぁ、あいつがクラスのやつの手伝いするわけねぇか。で？だからここなのか？」 空き教室。 予想通り怠そうな顔で真斗は文化祭を眺めていた。 「よぉ、真斗。歯ぁ食いしばれ。」 「は？」 真斗の頬を狙って一発。 真斗は見事に吹っ飛ばされた。 「ってぇ、何すんだよ。」 文句を垂れる真斗に手を差し伸ばす。 ただただ、一言。 「ありがとよ。」 真斗は俺の手を握り返した。 「で、俺なんで殴られたんだ。」 「夏乃はツンデレだから仕方ない。」 「ツンデレの域超えてんだろ。」 「まぁ、冗談はともかく。　夏乃の代弁をすると、 俺なんかを助けるために自分を犠牲にしやがって。お前にはまだ違う道があったかもしれないのに。 だが、助けて貰った身としてそれを言うのは間違っている。そもそも真斗の将来のことだ。俺がとやかく言う権利はねぇ。 ただ、やっぱり俺の為に将来を早々に決めてしまったことは間違いない。それはやっぱり尺に触る。 なら一発殴ってスッキリしよう。 ってわけだな、たぶん。」 ゴンっと大きな音が鳴り響く。多々を殴った音だ。 「真斗、お前が何に成り下がってもお前と俺の関係はかわらねぇ。いいな。」 「たくっ、あんたはいつもそうだな。かわんねぇ、そうか。そうだな。」 「かくして、裏の社会の人間に正式に決まった真斗はそれに対し周りとどのように付き合えばいいのか悩んでいたが、夏乃と多々様に慰められどんな自分も変わりなく自分であるのだと、受け入れてくれる人がいるのだと知ったのだった。めでたしめでたし。」 ゴンっと大きな音が2回鳴り響いた。 皆まで言うまい。