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6月 part3-1

午前2時。バーの店内には俺しかいない。 開いていたカクテルレシピ本に栞を挟み、バーのカウンターの上に、ノートとボールペンを出す。 さて、この前プロポーズしていたお客様に提供した、『ウエディング・ベル・スイート』をもう一度作ってみよう。 前回と同じ材料を使って、シェイクの回数、20往復と30往復、そして40往復で飲み比べてみる。 20往復だとアルコールを強く感じすぎるな。40往復だと氷が溶けすぎて水っぽくなってる気がする。シェークの回数は妥当だったみたいだ。 次に、ジンの種類を変えてみる。このバーの店内だけでも、数え切れないほど多くのジンがある。その中から、『No.3 ロンドンドライジン』、『エギュベルジン』、『ビーフィーター24』を選択し、それぞれカクテルを作ってみる。 祝福のカクテル、特に女性をターゲットにしていることを考えると、甘口のエギュベルジンが合うかもしれない。 ノートにメモしておこうと動いた瞬間、オーナーから借りている店の鍵が、ポケットの中でジャラッと音を立てる。 閉店後から電車の始発まで、こうして勉強できているのは、オーナーのご厚意だ。お店のお酒まで使わせてくれているのだから、本当に頭が上がらない。 …だからといって、調子にのって使いすぎると怒られるんだけど。

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