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8月 part 2-3
…いた!
片付けを終え、私服に着替え、従業員の通用口から帰ろうとしていた七星の後ろ姿を捉え、左腕を掴む。そのまま七星の身体を右に引っ張り、こちらを向かせる。
七星はこちらを見ない。ずっと下を向いている。
「オーナーに聞いたよ。藤沢さん、睡眠薬か何か混入してたんだって?おまえ、それに気づい…」
七星はぶつかりそうな程、勢いよく顔をあげた。
眼鏡の奥の、七星の目を見て、俺は言葉を失った。
…泣いてる?
「だって、あのお客…月城さんの大切な作品に…なんか変な薬入れやがって…
月城さん、あんなにカクテルに対して真剣で…あのカクテルも、気持ちを込めて作ってて…なのにあいつは…
僕、悔しくて………っ!」
七星はそこまで言うと、ぎゅっと唇を固く結び、また下を向く。その目から、大粒の涙がいくつも零れ落ちていく。
なんで泣いてんだよ。泣くなよ…
それじゃまるで、まるで…
俺のために怒って、俺のために泣いてるみたいじゃねえかよ…
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