25 / 121

9月 part 1-1

東京都港区 西麻布。 大通りから離れたところにある、車がギリギリ一台通れるくらいの裏路地。看板も出ていない。見た目はどこにでもある、普通のアパート。 その2階にあるのが、『BAR・Hideout』(バー・ハイドアウト)。 上品なアンティーク調のシャンデリア。ほのかなオレンジ色の間接照明。バーテンダーの背後には、ステンドグラスの光に照らされて、スピリッツやリキュールの瓶たちがきらきら輝いている。ダークブラウンで統一されたカウンターやテーブル席。奥には完全個室のVIPルーム。 高級感漂う、ラグジュアリーな雰囲気のバー。 会員制で、既存の会員からの紹介でないと入会できない。しかも、入会金は50万円という、わりとハードルの高いバー。だから、顧客のほとんどは、芸能人やスポーツ選手、モデルなど、有名人といわれる人たちだ。 このバーを経営しているのが、5年前、バー・アンベリールでの店内コンペを勝ち上がって独立した、山本 誠司さん。38歳と聞いたが、もっと若く見える。短く整えられ、二つ分けにした髪型。目鼻が強調された、きりっとした顔立ち。まるで仕事の出来るビジネスマンのようだ。 そして、ここは七星が、バー・アンベリールに来る前に、半年だけ勤めていた場所だ。 午前2時。今日、俺と七星は、山本さんのご好意で、閉店後のバー・ハイドアウトにお邪魔させてもらっていた。

ともだちにシェアしよう!