27 / 121

9月 part 1-3

「紹介制…。じゃあ、最初の顧客はどうやって見つけたんですか?有名人と知り合う機会なんて、そうそうないですよね?」 すると、隣に座っている七星が、眼鏡の奥の目を細めて言う。 「山本さんの奥様はね、元アイドルなんですよ。ユニット名は、『イブニング娘。』っていうんですけど」 「えっマジ!?…山本さん、奥様のお名前、お聞きしてもいいですか?」 山本さんも、柔和な笑みを浮かべて答えてくれる。 「うん。当時は、後藤 真矢って名前でね。元々、幼馴染だったんだよ。若い人は、知らないかもしれないね」 「いや知ってます!マジですか!ごっちん!?」 俺が小学生だった当時、なっち派かごっちん派か、よく友人と議論したものだ。数年前、一般人と結婚したというニュースが流れたが。…初めて見たぞ、一般人。 なるほど、奥様の人脈から、この会員制のバーは始まっているわけか。 「羨ましいです!ごっちんと結婚なんて! ああ、俺もアイドルと結婚したいなぁ。誰か可愛いアイドルが、うちのバーにも来てくれねえかなぁ!」 つい口に出てしまった、俺の心の叫び。 …あれ。七星がすっげえ冷たい目で見てる。 「どうした?」 「べーつーにー。なんでもないですー」 珍しくふてくされた態度でカクテルを口にする七星。カウンターの向こうで大笑いする山本さん。 …なんだ?浅はかな考えだとでも思われてんのか? まあ、その通りだけど。

ともだちにシェアしよう!