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9月 part 3-11

目覚めて最初に見たのは、手首に残る縄の跡。 自由になった右手で目をこすり、あたりを見回す。ベッドサイドのデジタル時計には、9:37と表示されていた。…もう朝か。 「あ、拓叶さん。起きました?」 七星が近づいてきて、ベッドサイドに座り、俺の髪に優しく触れた。 「七星、おまえ、どうして…」 俺の質問に、七星は少し苦い顔をして答える。 「僕、なんだか胸騒ぎがして。仕事終わって帰宅してから、ちょっと調べてみたんです。 あのバー、 普通にネット検索しただけだと、どこにでもあるバーのような紹介ページが出てきます。 でも、風俗の裏サイトでは、悪名高い有名店でした。女の子を持ち帰りたいなら絶対にココだって。そんなバーのオーナーが、拓叶さんにひとりで来いと言った。嫌な予感がして、タクシー飛ばして来たんです」 「そっか。…悪かったな」 左に視線を逸らして言う俺を見て、七星は少し笑って言った。 「いえ、もっと早くに気づいていれば良かったんです。そうすれば、そもそもあんなバーには行かせませんでしたし。こちらこそ、すみません」

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