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9月 part 3-12

なんだか、眼鏡の奥の七星の目に疲れが見える。少し充血しているような。 「…おまえ、ちゃんと寝たのかよ?」 「僕は大丈夫ですよ。 それより拓叶さん。男二人でラブホから出るの、嫌でしょ? 僕、先に出て、あのバーに置きっぱなしの、拓叶さんのバッグ、取り返して来ますね。 あ、大丈夫ですよ。山本さんにも来てもらいますから。そもそもここを拓叶さんに紹介したの、山本さんですし。責任、取ってもらいますから。 ホテル代は払ってますから、もう少し休んでてください。あ、でも12時過ぎたら延滞料かかるんで、気をつけてくださいね。 じゃ、拓叶さん。また仕事の時に、バッグ返しますから。ゆっくりしててください」 俺に水のペットボトルを渡す。自分の財布から紙幣を何枚か抜き、近くのテーブルに置く。そして七星は俺に向かって微笑み、手を振った。 静かに足音が移動し、オートロックの扉が閉まる音がした。 俺はベッドから上半身を起こし、水を飲む。冷たい水が、喉の奥を通り抜けていく。 そして思い出す。夜中の七星のことを。七星がしてくれたことを。七星の手や口の感触を。 「ーーー!」 誰も見ていないのに、俺は掛け布団をたぐりよせ、下半身を隠す。 …な、なんだ、まだ媚薬が残ってんのか、俺。もうちょい休もうかな… 何故だか鼓動が高まる胸を押さえ、赤く熱を持った顔を隠すように、俺は掛け布団を頭まで被り、布団に潜り込んだ。

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