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10月 part 2-2
「いよっしゃあぁーーー!」
ガッツポーズで天井に向かって叫び、カウンターから出て、七星の両肩に両手を置いて言う。
「いやー、オーナーやお客様に褒められるのも嬉しいけどさ、おまえに褒められるのが一番嬉しいよ、七星」
あまりの嬉しさに、思わずにやけてしまう。ほおが緩むのを止められない。
…と、七星が顔を伏せる。顔を覗き込むと、真っ赤になった七星の顔。下がった眉。眼鏡の奥の瞳が、恥ずかしそうに揺れる。
急に気づく。自分が、キスできそうなくらい、七星の至近距離にいることに。七星の唇が、すぐ近くにあることに。
…こいつ、男なのに、柔らかそうな唇してる…
…いや、何考えてんだよ、俺!
慌てて七星から離れ、カウンターの中に戻る。なんだ、この心臓のうるさい感じ。静まれ静まれ!
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