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2月

ついに来た、この日が。 バー・アンベリールは、ホテルのバーだ。だから、基本的には店休日はない。だが、5年に一度、この日だけは休みになる。 何故なら、今日は… 「いよいよなんですね、拓叶さん」 さすがに、七星も緊張を隠せないようだ。…おいおい、右手と右足が一緒に出てるよ。本当にいるんだな、そんなやつ。 後ろから、七星の背中を、ドンっと思いっきり叩いた。びっくりして振り向く七星。 「大丈夫だよ、いつもどおりにやれば。 …俺に負けた時、緊張していつもの調子が出なかったから、なんて言い訳は聞かねえからな、七星」 ニヤリと笑って言う俺を見て、七星はやっと、いつものふわりとした笑顔を見せた。 ロッカールームでバーテン服に着替え、目を閉じて深呼吸する。大きく息を吸って、はいて…さあ、あとは、自分のベストを尽くすだけだ! さあ行こう。今日は店内コンペ当日、本番だ!

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