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第6話-3

くーちゃん、とは、くるみという名の猫だ。茶トラの雌。マイペースで優しい猫だった。 俺の両親は何年か不妊治療をしていたが、なかなか子どもに恵まれなかった。ある時諦めて、子どもの代わりに飼い始めたのが、くるみだ。 くるみを飼い始めてわずか3ヶ月後、母が妊娠した。そうして産まれた待望の子どもが、俺だった。 産まれた時から、くるみは側にいて当たり前の存在だった。学校から帰ると、ずっと一緒に遊んでいた。悲しいことがあって泣いていると、そっと近くに来て撫でさせてくれた。夜にはいつも、俺の足元で、丸まって寝ていた。 猫の寿命は短い。17年は長寿に入るんだろう。だが、くるみという家族を失った俺は、かなりのショックを受けた。 気づくと、大輝に電話していた。大輝はすぐに来てくれた。 …辛かったな。 そう言って頭を撫でてくれた瞬間、俺の涙腺は決壊した。 大輝の胸に顔を押し当て、大声で泣いた。大輝のTシャツを両手でぎゅっと握り締める。大輝の胸のあたりに、涙でシミができる。それでも何も言わず、大輝はただ頭を撫でてくれていた。

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