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第7話-4

さすがにご馳走になるだけではお祝いにならないので、俺はケーキを買ってきていた。 大輝のうちは何回か来てるから、どこに何があるかはだいたい分かる。 マグカップを2つ出し、コーヒーを入れる。インスタントだからお湯を入れるだけだが、粉とお湯を、説明書きどおりにきちんと量る。仕上げにコーヒーフレッシュを入れ、丁寧に、できるだけ丁寧に混ぜる。 ケーキをお皿に出し、フォークを添える。パイ生地とカスタードクリームが何層にも重なった、ケーキ屋いちおしのミルフィーユ。 そのミルフィーユに願いを掛ける。大輝が幸せであるように、これから幸せをどんどん積み重ねていけるようにと。 「大輝」 なんだか大輝の顔がぼやけて見える。でも、笑顔は作れているはずだ。ケーキとコーヒーを渡しながら、座っている大輝としっかり目線を合わせて、俺は言った。 「一ノ瀬と、幸せになれよ」 こうして、俺の、恋とも呼べないような恋は、終わった。

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