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第8話-2 大輝side

こんなことを言うと悠斗に怒られそうだが、悠斗の第一印象は、可愛い、だった。 天使の輪が見えるほどの、細くてさらさらな髪の毛、表情豊かな大きな瞳、天真爛漫な笑顔。ボーイッシュな女の子のように、男性でも女性でもない中性的な魅力が、悠斗にはあった。 悠斗が俺のひとつ前の出席番号だったこともあって、高校に入学してすぐに俺たちは会話を交わし、仲良くなった。 悠斗は、他人との距離感の取り方が尋常じゃないくらいに上手い。 会話も行動も、遠慮せず近寄ってくるのに、一番心地よいところで立ち止まる。これ以上近寄るべきじゃない、という線を見極めるのがものすごく上手い。だから、悠斗は友達がすごく多い。男女関係なく、いろんな人が悠斗のまわりに集まってくる。 理由は、初めて悠斗の家に行った時に分かった。 …この子、うちの猫。くるみって言うんだ。 …まだ大輝のこと怖がってるみたい。そっとしておいてあげて。 …あ、大輝のこと、いい人だって分かったみたい。 …撫でてほしいって。首のあたりね。あ、ストップ。これ以上は嫌だって。 まるで、猫の気持ちが分かるかのように代弁する悠斗。 どうやら、ひげや尻尾の動き、耳の向き、しぐさ、さらには目の瞳孔の開き方までもを観察して、気持ちを推測しているらしい。 産まれたときから猫と生活している悠斗にとって、ちょっとした変化から気持ちを読み取ることは、当たり前のことなのだ。 だから、悠斗は人の表情の変化に敏感で、人を不快にさせることなく、ちょうどいい距離感でいられる。

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