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第10話-3
「ほんともー、勘弁してくれよー。未だに俺、一ノ瀬に『この泥棒猫!』とか言われそうで、ビクビクしてんだからさー」
「あははっ!何それ!てゆうか、この状況じゃ、私の方が泥棒猫みたいじゃん!」
行儀悪く、テーブルに片肘をつき、その上に顎を乗せて俺が言うと、一ノ瀬は笑いながら立ち上がった。
「ドリンクバーのおかわり、何かとってくるけど、何がいい?」
リクエストを聞いて、ポニーテールを揺らして行ってしまう。ほんと、いい奴だ。
「あ、そーだ大輝。これ」
俺は持ってきた紙袋を大輝に渡す。
大輝がちらりと中身を確認する。中身は…Tシャツとボクサーパンツ。
「俺が倒れた時、貸してくれた、その…し、下着…。返すの遅れて、ごめ…」
「なになにー?」
いつの間にか戻ってきていた一ノ瀬が、大輝の背後から紙袋の中を覗き見る。そして、悪戯っぽくにやにや笑った。
「あんたたちって、もーそういう仲なの?もー、大輝くんってばヘタレのくせに手は早いんだからっ!でも、男同士でもゴムはしなさいよー」
「げっほごほっ」
「ちょっと、一ノ瀬さんってば!」
…俺たちは、いま人生の分岐点 に立っている。
さあ行こう。新しい景色が見える場所へ。
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