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恋人編 第1話-2

「いやーほんとありがと!大輝、説明すんの上手いな。おかげで、すげー勉強はかどったわー」 図書室を出て、歩きながらお礼を言う。今から学校を出て、駅まで一緒に帰るところだ。外はもう暗くなっているころだろう。残っている生徒も少なく、校内は静かだ。 5月。俺と大輝が付き合い始めて、もうすぐ1カ月になろうとしている。 ゴールデンウイークには、ふたりで遊園地に行った。初デート、ということになるんだろうか。アトラクションの長い待ち時間も、大輝と話していると全然気にならず、むしろ楽しかった。大勢の家族連れやカップルで賑わう園内で、さりげなく、はぐれないようにと手を繋いでくれて、ドキドキが止まらなかった。 幸せだ。大輝と付き合えて良かったと、心から思う。 靴箱に上履きを入れていると、大輝がこちらを振り向いて言った。 「中間テストの最終日、うちに来ない?部活も休みだし、うちの親も仕事でいないしさ」 中間テストは午前中で終わる。午後は、全ての部活が休みになる。先生たちが採点地獄に突入するからだ。顧問がいないと部活はできない。 「ん、いいけど、どーした?もしかして、なんか作ってみたいレシピでも見つけた?」 「いや、そういうわけじゃないんだけど…」 大輝はまわりを見渡してから、俺の右肩に自分の右手をかけ、身体を屈める。そして、俺の右耳に唇を押し当てるようにして囁いた。 「悠斗と、ふたりきりになりたくて」 低くて優しい声。体全体に声が響いてくるようで、身動きができない。 ゴトッ! はっとする。どうやら持っていたスニーカーを落としたらしい。何やってんだ俺。 「だだだ大輝っ、そっそろそろ電車来る時間じゃね?いいい急がないとっ!」 俺は急いでしゃがんで靴を履く。やべえ、俺いまどんな顔してんだろ。落ち着け落ち着け! 早く外に出よう。5月の爽やかな風に当たって、気持ちを落ち着かせよう。うるさい心臓を押さえながら、俺は外に向かって歩き出した。

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