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第12話-3

「竜先生、どうしたの?元気ないよ?」 土曜日。いつもの、育成クラブのボランティア。 運動場に続く階段に座り込み、ため息ばかりついているオレの隣に、小1のゆきちゃんが座る。 「いや、大丈夫だよ。ゆきちゃん」 遊具で遊ぶ子どもたちを見ながら、無理やり笑顔を作って言うオレに向かって、ゆきちゃんは言う。 「竜先生、もしかして、……………恋してるの?」 「へ?」 あまりにも予想外の言葉に、オレが顔を向けると、ゆきちゃんはにっこり笑って言った。 「あのね、ゆきもね、恋してるの。6年生のじどうかいちょうの、ともきくんがね、かっこいいんだ!4月のえんそくでね、手をつないで歩いたの。ゆき、そのときに恋におちちゃった。 ともきくんに会うとね、ゆき、むねがドキドキしちゃうの。でね、ひとりでいるときも、ともきくんのことかんがえて、むねがギューってしちゃうんだ。 これって、恋してる、ってことだよね」 「そ、そんな…ゆきちゃん…」 いつのまにか近くに来ていた小3のこうたくんが、持っていたサッカーボールを落とし、呆然とする。 …失恋か。かわいそうに。少年よ、強く生きろ。 恋すると、胸がドキドキして、ギューっとしちゃう、か… オレ、もしかして、本当に瀬戸のことを…

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