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幼馴染み⑬

…でも、もぅ遅い。 優時には山下莉子がいる。 ずるいのは分かっている。 でも、今だけ。…今だけでいいから。 顔を上げ、再び優時の唇に自分のそれを押し当てた。 優時は優しい。 俺はそれにつけ込むんだ。 優しく唇を重ねあってると優時の指が俺の涙を拭ってくれる。 後から後から溢れてくるから、いくら拭っても止まらない。 俺の唇から離れた優時の唇は、そのまま瞳に移動してそこに口付けた。 「…泣き虫」 ちゅっちゅっちゅっ。 「…優時…」 「…ん?なんだよ、さっきから」 いつもより、少し甘い声。 大きな手は俺の頭をよしよしと撫でてくれる。 「…優時…」 「なんだよ」 その先を言わない俺に、優時は苦笑する。 「…優時」 優時、優時、優時、優時 俺はバカだから、自分の気持ちに今ごろ気づくバカだから、今まで当たり前のように隣に居たのに もぅ、そこは俺の場所じゃない。 ようやく気づいたのに… さよならだ。

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