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第53話 幼馴染みで宿題テスト

 茅島高校では、長期休みのあとすぐに行われるテストを「宿題テスト」と呼ぶ。誰が言い出したかは知らないが、なかなか的を射た呼び名だと思う。春休みには宿題はないが、宿題テストのために勉強が欠かせないのだ。  毎年、春は野球に明け暮れ勉強なんかしてこなかった俺だが今年は違う。拓斗にムチ打たれながら必死に年号を頭に叩き込んでいる。 「春樹はやればできる子なんだから」  と、たまにアメもくれる。  試験勉強と言っても、大学受験目指して一、二年の復習を続けてきたのだから、そのまま続けてやるだけだ。拓斗の教えかたには無駄がない。  野球は野球でほぼ毎日練習している。今年は昨年より良い成績を残したい。投手の俺の責任は結構重い。 「投げてる時の春樹はすごく格好いいよ」  と、拓斗はやはりアメをくれる。俺はおだてられて木に登る。 「ますたー!」  金子が俺達の教室に飛び込んできた。 「ますたー! どうしちゃったんですか!」 「なにがだよ?」  金子が俺の腕に取りすがる。拓斗が金子の腕をやんわりと外す。 「ますたーの成績です! 跳ね上がってます!」 「なんだ、お前もう成績発表見てきたのか、早いな。拓斗は何番だった?」 「いつも通り上位です。そんなことより! 早く見に行くですよ!」  金子に腕を引っ張られ立ち上がる。拓斗は金子の手をぐいっと引き剥がす。金子はそんなことにも気づかない興奮ぶりで、早く早くと手まねいた。 「おおー」 「やったね春樹。成績大幅アップ。真ん中までいったね」 「いったな」 「お二人とも、なんでそんなに冷静なんですか! 八十位近く一気に上がってますですよ! 驚きましょう!」  金子の騒ぎっぷりに人が集まる。寄ってきた橋詰が、さも驚いたという顔で言う。 「おお! 春樹の成績が大変な! 頭でも打ったか?」 「打たねーよ。普通に勉強しただけだ」 「春樹が勉強するなんて! 頭でも打ったか?」 「だから、打たねーよ」 「春樹はやればできる子だからね」  拓斗が俺の頭を撫でる。橋詰が、ぽんと手を打つ。 「拓斗に撫でてもらうと成績が上がるんだな! 拓斗大先生、俺も撫でてくれー」 「ははは、橋詰くん、顔が面白いよ」  笑いながら拓斗は背中で腕を組んだ。  俺の成績アップは野球部の練習中にも話題にされた。産休を終えた顧問の岬先生が信じられないものを見るように、目を丸くして俺を見ていたのが少し気になる。俺、そんなに出来ない子だと思われてたのかな……。 「春樹先輩は成績いつも良かったですよね?」  わいわいと俺をからかう声の中、山科の発言で場は静まり返った。 「中学の時は上から二十番くらいだったでしょ?」 「えー! 牟田くんが!?」 「岬先生、そんなに驚かれると傷つきます……」 「いや、たしか春樹は中学三年の時だけは成績良かったな。けど一、二年はひどかった。最下位争いしてたよな」  同じ中学だった橋詰の、俺の肩を持ってくれるのか貶めたいのかわからない発言に、山科が口をとがらせる。 「えー? 春樹先輩が? 信じられないです」  俺は山科の頭を撫でてやった。  練習が終わって家に帰ると、ご馳走が待っていた。 「お帰り、春樹」 「ただいま。なんかパーティみたいだな。なにかあった?」  拓斗が嬉しそうに笑う。 「君の成績アップのお祝いです」 「ケーキまである」 「うん。簡単に、レアチーズケーキだけどね。食べ放題だよ」  俺の好物がずらりと並んだテーブルにヨダレが垂れそうだ。拓斗は誰よりも俺の嗜好をわかってる。唐揚げだとかベーコンエッグだとか子供みたいなものばかり。  小さいころから一緒にいるんだから、知っていて当たり前なのかも知れない。けれど俺は、拓斗が俺のことをよく知っていてくれるのが何より嬉しい。 「食べよっか?」  優しく微笑んでくれるのが何より嬉しい。  チーズケーキまでぺろりと平らげると拓斗が嬉しそうに笑う。 「美味しそうに食べてくれるから作りがいがあるよ」 「美味そうに食べるのは美味いからだよ」 「ふふふ。ありがと」  拓斗が俺の膝に乗って、俺の口元をぺろりと舐めた。 「チーズケーキ、ついてたよ」 「あんまり美味いからとっておいたんだ」 「またいつでも作ってあげるよ」  拓斗が俺の頭を撫でる。 「拓斗、成績アップのご褒美ちょうだい」  俺は拓斗の首に腕を回すと、唇を合わせた。 「拓斗が欲しい」  拓斗は俺の頬を両手ではさみ目をのぞきこむ。 「めずらしいね、おねだり」 「だって……。勉強ばっかで……」 「たまってる?」  俺は真っ赤になってうつむいた。 「恥ずかしいの? かわいい」  拓斗は俺の顎に手をかけ、上向かせると優しくキスをした。 「ベッドに行こうか?」  俺はまたうつむいて、うなずいた。  部屋に入り、俺の服に手をかけた拓斗をベッドに押し倒す。拓斗の腹にまたがりキスをした。 拓斗はじっと俺を見ている。拓斗のシャツを捲りあげ、胸のものに吸い付く。それは甘く柔らかく、いつまでも舐めていたかった。  拓斗の手が伸び、俺の耳をくすぐる。俺はびくんと体を揺らしながらも、拓斗の胸から顔をあげない。 「春樹、気持ちいいよ」  拓斗の手が俺の耳を頬をうなじをくすぐる。その度びくびくと跳ねながら、俺は拓斗を味わい続けた。  唇をだんだん下へ落としていく。拓斗の脇腹を撫でる。ほどよく引き締まった体は彫刻のようで、ひんやりと舌に心地よい。  時間をかけてたどりついた拓斗のそこは、硬く立ち上がっていた。服を剥ぎ取り口に含む。 「あぁ……」  拓斗がため息を漏らす。 「春樹、だんだん上手になるね」  俺は拓斗の後ろに指をはわせる。そっと撫で上げ、指を入れる。 「ん……。春樹、気持ちいいところ、探してみる?」  俺は指を曲げ、その場所を探す。すぐにコリコリとした手応えをつかんだ。 「はぁっ……ん」  拓斗が大きく膨れ、精が吹き出した。俺は滴も残さぬように吸い上げる。 「春樹、君にさわりたい」  拓斗が俺の顔をあげさせ、キスをする。まだ口のなかに残っていた拓斗の滴が二人の舌の間で滑る。  拓斗は俺の服を脱がせ、首から胸、腹、と舐めていく。指で俺の肌の上に模様を描くように、そっと触れる。 「あ……、それ、いい」 「いい? じゃあもっとしようか」  拓斗の指はくるくると俺の上で踊る。その微妙な感触に俺の息はあがる。 「ん……、はぁ」  ため息がでるほどに。俺は身をよじる。 「春樹、他には? なにして欲しい?」 「ここ、舐めて……」  俺は立ち上がった自分のものに手をかける。拓斗はその手を握って、俺を口にする。 「あぅ、ん!」  待っていた以上の刺激がきて、俺はびくびくと吐き出した。拓斗はちゅるると音をたてて飲み干す。 「ん。濃くて美味しい」 「やぁ……、恥ずかしい」 「もっと恥ずかしいこと、しよう」  拓斗は俺の手をとると俺の後ろにあてがった。 「自分で広げてみせて」  顔に血が上る。俺はそっと指を俺の中に挿しこんだ。 「んっ、んん」 「いいところ、探せる?」  俺は指を円を描くように回して、その場所を探す。 「あ! やぁ!」  快感は突然やってきた。腰が独りでに動く。拓斗が俺のもう片方の手を俺の中心に導く。俺はすがりつくように自分自身を握りこむ。  後ろを指で引っ掻きながら、前をしごく。とろとろと透明な液体が指に垂れる。  拓斗がごくりと生唾を飲み込んだ。  俺は拓斗が欲しいのに、気持ちよすぎて手を離すことができない。 「拓斗、たくとぉ……」  拓斗は拓斗自身を握りしごきあげる。後ろにも手をはわし指を突き入れる。それはひどく卑猥な光景だった。自分も同じ格好をしていると思うと、恥ずかしさで顔を背けたくなる。けれど拓斗の美しい体から、俺は目を離せない。 「う……あぁ」  拓斗が唸るように喘ぐ。俺の耳はその声でも快感を拾い、俺はますます猛る。 「んんっ、たくとぉ、あっあん!」  拓斗の名を呼びながら自分の中を掻き回す。その場所を引っ掻き喘ぐ。 「やぁっ! あっん!」  俺は根元から先まで強くしごき、乳白色の液体を吐き出す。それを見た拓斗は俺を押し倒すと脚を持ち上げ、押し入ってきた。 「あああぁん!」  突然の衝撃。拓斗が爆発する。けれど拓斗は硬くそそり立ったままで俺の中で動き続ける。 「あ、あぁ、あん!」  ずちゅずちゅと水音をたてながら拓斗が突き上げる。俺のものを握りやわやわと揉む。 「あ、いい、きもち、い」 「春樹、かわいい」  拓斗は腰の動きをぴたりと止める。 「やっあ……、もっとして」  拓斗は口づけを落とし、浅い所をゆっくりと、輪を描くように刺激する。 「あ、あ! そこ、そこ、もっとぉ」  その場所を拓斗はコリコリと集中して攻める。俺の体を反転させ、腰を高くあげる。ゆっくりと、慎重にそこを擦り続ける。 「あん! いい! いい……、はぅん!」  俺のものからたらたらと滴が垂れ続ける。拓斗はそれを掬いとり、俺の口に入れた。苦い。けれどなにか淫靡で、俺は拓斗の指に吸い付いた。  拓斗の指が口中を這い回る。俺の喉の奥まで撫でようとするように。苦しい。けれどどこまでも拓斗を飲み込みたかった。 「んっう!」  拓斗の動きが激しくなった。  ぱんぱんと肉がぶつかる音がする。俺のものは触ってもいないのに、ますます反りかえる。  拓斗の指が口中から出ていく。俺の腰を両手で強く握り、腰をぶつける。 「あん! あ、あ、んん!」 「春樹、春樹、気持ちいい?」 「いい! すごくいぃ」  腰を打ち付けながら拓斗がたずねる。 「どこがいいの?」 「あん! やぁ! しらないぃ……」 「答えないとやめちゃうよ?」 「や、いや、やめないで、はぁん!」 「気持ちいいのは、どこ?」  ずちゅずちゅと水音が俺を煽る。 「おしり、いい! きもちぃよぉ」  拓斗が俺の耳に口をつける。 「恥ずかしいの? でも好きでしょ、恥ずかしいの」 「やっ、ん! きらいぃ」 「うそ。すごくしまったよ」 「やぁ、あん!」 「ね、好きなところ、どこ? 触ってあげるよ」 「ん、せなか、はぅん!」  拓斗の指が、つつつと背骨を撫で上げる。 「かわいい、びくびくしてる」 「ひゃぁ、ああぁ! あ! いい! きもちいい!」  拓斗の腰が俺の腰に強く強くぶつかる。 「あん! たくとぉ、もっと……」  拓斗は突き入れながら、俺のものを握る。 「ふぁ、ああん! だめえ!」 「だめ? なにがだめ?」 「にぎっちゃ、だめえ! いっちゃう!」  拓斗は強く俺のものをしごきあげ、俺は拓斗の手に精を吐き出した。 「やっあ! ん!」  拓斗は止まらず、俺はまた立ち上がる。拓斗は俺の体を横にして片足を持ち上げる。俺の目にその部分がはっきり見える。 「やだぁ、これはずかしい……」 「でも、好きなんでしよ? 恥ずかしいの」 「や! 好きじゃないぃ」 「嘘つくとやめちゃうよ」  拓斗がぴたりと動きを止める。 「やだ、やめないでぇ」 「じゃあ、言ってごらん」  拓斗はにっこりと笑う。ああ、その笑顔。逆らえるわけがない。俺は震える口を必死に動かす。 「……すき」  拓斗の笑みがますます深くなる。 「なにが?」 「……はずかしいの……すき」  拓斗は俺の手を俺自身に導くと、握らせた。 「やっ、ん!」 「動いてあげるから、自分でしてみせて」  拓斗はゆっくりと抜き差しを始める。俺は目の前に俺のすべてを見ながら、自分で自分を昂らせていく。 「はん! あ、たくとぉ、きもちいぃよぉ……」 「恥ずかしいの好きだもんね」 「やっ、ちがうぅ」 「違わない。春樹のことはなんでも知ってるよ」  そうだ。  拓斗は俺のことは何でも知ってる。俺の知らない俺までも。 「春樹、もういきそうだね」 「んっ、いっしょに……」  拓斗は俺の両足を抱え込み、強く強く突き上げる。 「はぅ! あん、あ! いく、もう、だめぇ!」  拓斗が俺の中に注ぎ込む。俺は自分の手に。  ぬるりと拓斗が出ていく。後ろから拓斗の吐き出したものがこぼれていく。 「もったいない」  拓斗が、俺が思っていたのと同じことを言う。俺の手を握ると、俺が吐き出したものを舐めだした。 「……まずいだろ?」 「美味しいよ。こんなに美味しいものはこの世に他にないよ」  拓斗は俺に覆い被さりキスを落とす。かすかに甘いような気がした。 「春樹は最近、いろっぽい」  俺は、ふっと笑う。 「なんだよそれ」 「色気を振りまいたらダメだよ。僕だけに見せて」 「振りまかないよ。てか色気なんかないよ」  拓斗はまた俺にキスをする。 「いろっぽいよ。僕は君より君のことを知ってるんだから」  そうだな。  その通りだ。  けど。 「そんなこと言うなら、俺はお前よりお前のことを知ってるよ」 「ほんとに?」  拓斗が嬉しそうに笑う。 「お前はいろっぽいよ」  そう言ってキスすると、拓斗は恥ずかしそうに笑った。  その笑顔。  その笑顔は俺だけのものだっていうことも、知ってるよ。  その笑顔が何よりのご褒美だよ、拓斗。  俺はまた拓斗にキスをした。

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