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第58話 幼馴染で猛勉強
夏が終わった。
俺たちの最後の夏が。
……なんて気分に浸っていられたのは野球部の夏合宿が終わった翌日まで。
その後、拓斗のしごきが待っていた。
受験勉強だ。
夏休み前までに一、二年の復習を終わらせている。
これからは三年の範囲と、模試だ。
とりあえず点数がとれていない文系からやっつけることになった。
「古文はもう楽勝だな!」
百人一首で苦手意識がなくなった俺が元気よく言うと、拓斗は曖昧な笑みを浮かべた。
「うん、がんばろうか」
それからずっと古文の文法を叩き込まれている。
あり、おり、はべり、いまそがり。
る、らる、す、さす、しむ。
口から平安の風が漏れ出ていきそうだ。
耳から歌人が飛び出しそうだ。
暗記は得意なはずなのに、なぜだか古文法は脳ミソのシワに吸い込まれない。覚えたと思ったら、はしからどんどん忘れていく。
「た、たくと……。俺はもうだめだ……」
参考書の上に突っ伏した俺の髪を、拓斗が指で梳く。
「うーん、そうだねえ。記憶法をいくつか試してみようか」
「なんだ、それ?」
「ただ暗記しようとするんじゃなくて何かに関連付けたり、五感を使ったりするんだよ」
「なんだ、それ?」
「うん、試しにやってみようか」
拓斗は俺の前にノートを広げる。
「僕が参考書を読み上げるから、参考書を見ながら、声も聞きつつ、ノートに書き写してみて」
「よ、よし。やってみる」
「じゃあ、いくよー」
拓斗が俺に負い被さるように屈み込み、俺の耳元で囁く。
「格助詞、が、の、を、に、……」
必死にペンを動かすが、拓斗の息が耳にかかって集中できない。
「あ、あの、拓斗さん?」
「ん? なに?」
「あの、近い……んじゃないでしょうか」
「だってこうしてないと参考書が見えないでしょ」
「なんで囁くの?」
「耳元で大声出せないでしょ」
拓斗の手がペンを持つ俺の手を撫でる。拓斗の唇が俺のうなじに落ちる。
「っ、拓斗! 勉強にならないだろ!」
「イメージ記憶法っていうのもあるんだよ」
拓斗の手は俺の腕を滑り、胸へ移動する。
「な……んだよ、それ」
俺の口からは吐息混じりの言葉しか出てこない。
「たまに、家の鍵かけたかな? とか、ガスの元栓閉めたかな? って、不安になることない?」
「……んっ、ある」
拓斗は俺を抱きすくめ、俺の胸をくすぐる。
「無意識に行動すると記憶に残らないんだ。だから、普段とは違うことをしながら鍵をかけると覚えていられる」
拓斗が俺の耳に歯を立てる。
「んっ、ゃん」
「だから、こうしながら暗記してみて? ほら、参考書読んで」
俺は参考書を手に取り、次の項を読む。
「ぶ、文は通常、終止形っ、または……め、命令形で結ばれるが、係助詞の、ぁん!」
拓斗が服の上から俺の胸のものをつまんだ。
「ほら、がんばって」
言いながら、もう片手で俺の頬を撫でる。俺はうっとりと目を瞑ってしまう。
「まだ続きがあるでしょ」
拓斗が俺の顎に手をかけ、キスをしてくる。
「っ、んー、んむ、」
「なに? 何か喋ってる?」
拓斗の唇が離れて、俺は大きく肩で息をする。
「お前、俺に勉強させたいのか、させたくないのか、どっちだ!」
「どっちも」
「贅沢言うな!」
「大丈夫、大丈夫。君ならできる。ほら、続き」
俺の顔を参考書に向けさせて、拓斗は俺の首筋に唇を落とす。
「かっ、係助詞があるものの、っ、……結びの語が省略される場合があ、る……、や、やめ……」
拓斗の手が俺のシャツのボタンをはずす。
「ほら、続き」
「ゃっ、むりぃ……んぁん!」
直に指でつままれ、声が跳ねる。
「しょうがないなあ。じゃあ、ちょっと休憩しようか」
するりと拓斗の腕が離れていく。やわらかな拘束を解かれ自由になった体は、しかしもう火がついたようで後戻りはできなかった。
拓斗の服の裾を握り、引っ張る。
「ん? なに、春樹」
拓斗はいつものにやにや笑い。しかしそんなことに構っている余裕はもうなかった。
「続き……して」
「いいけど、ちゃんと参考書読むんだよ」
「ん……、がんばる」
拓斗は俺の手に参考書を握らせると、跪き俺のズボンをくつろげた。俺のものはすっかり立ち上がり触れられるのを待ちわびている。
「さ、読んで」
「『跡のため忌むなる事ぞ』など言へるこそ、……あん!」
拓斗の指が俺のものをそっと撫でる。
「がんばるんでしょ」
「うっ……、かばかりの……なかに、ぁん!な、何かはと」
俺のものから漏れでた液体を、拓斗が美味しそうに舐める。
「ひぁっ!」
俺のものを口にくわえ込み、太股をくすぐる。
「やっ、あっ!」
もう文字なんか目に入らない。俺は参考書を放り出し、拓斗の頭に手をかける。じゅるじゅると音をたて拓斗が頭を振る。
「もう、もう、でる!」
俺は拓斗の口中に放ち、拓斗はそれを飲み干した。荒い息を吐いていると、拓斗が参考書を拾い上げ机の上に置く。
「立って机に手をついて」
言われた通りにすると、拓斗は俺の服を剥いでいく。肌を滑り落ちる服のわずかな刺激で、俺は少しずつ硬くなる。
「これなら読めるでしょ」
そう言って拓斗は俺の中に指を滑り込ませる。
「っあ!」
「ほら、読んで」
「お、御守り目はべるなむ、……ゃん!」
拓斗の指はゆっくりと俺の中をかき混ぜる。
「あ、あぁ……ん」
「つづき」
拓斗に耳元で囁かれ、ぞくりとしたものが腰から背中をかけ上がる。
「うしろっ、やすかるべきことに、は、はべるを、んぅ、あっ! そこ、あっん
だめえ!」
その一点を指で擦られる。拓斗が俺の背中を舐めあげる。
「あ! あぁぁ! んあぁ!」
すっと拓斗の指が引き抜かれる。俺の腰はその指を追って後ろにつき出される。
「つづき」
囁きながら拓斗のものが俺の中に入ってくる。
「あ……っ、んん!」
指とは比べ物にならない圧迫感に顎がのけ反る。拓斗はゆるゆると動き、良いところを擦る。
「やっ、だめ、そこだめえ!」
「なんで? 好きでしょ、ここ」
「す……きじゃない……ぃ」
「うそ。ここ擦ると中がきゅうきゅうするよ」
「言うなぁ!」
拓斗は俺の耳元で囁く。
「つづき」
俺は目を机の上に向けたが、視界が霞んでもう文字を追うことができない。
「もう勉強やめる?」
拓斗がぴたりと動きを止め俺の中からするりと出ていこうとする。
「やっ、やめないで!」
「どうしたい?」
「ん……もっと、して」
「なにを?」
見なくてもわかる。拓斗がにやにや笑っている。俺は耳まで真っ赤にして俯く。
「俺のすきなとこ……擦って」
拓斗は俺の体をぎゅっと抱き締めると、ゆっくりゆっくりと動き出した。
「んっふ、はぁ……」
優しいその動きに溜め息がでる。拓斗は俺の良いところを擦っては奥へ進み、擦っては出口に向かう。
「ん、ぁあ、はぁ……」
優しい律動。穏やかな快感。
俺たちはいつもよりゆっくりと、深くのぼっていく。
拓斗の腕が前に回され、俺を握りこむ。
「んっ……!」
そこも柔らかく包まれて暖かな幸せが全身に行き渡る。
拓斗が耳元で囁く。
「すみやかにすべき事をゆるくし、ゆるくすべきことを急ぎて、過ぎにしことのくやしきなり。文中の助動詞の意味と活用形を答えなさい」
「わ、わかんない、んっ!」
拓斗が強く突き上げる。耳を強く噛む。
「いたぁ、ぁん、ひゃぁん」
「惟光の朝臣の来たりつらむは。この『らむ』は……」
「わかんないぃ!」
拓斗の抜き差しが激しくなる。
「あぅ! ひぁん、んん!」
「春樹、そんなんじゃ覚えられないよ?」
俺は目に涙を溜めて訴える。
「も、いいから、もっとぉ」
腰を拓斗に押し付ける。拓斗は俺の腰を両手で強く握ると、奥深くまで一気に差し込んだ。
「ひあぁ! ああん!」
ずちゅずちゅと湿った音が俺の後ろから聞こえる。拓斗の吐息が俺の耳を侵す。
「あん! あん! たくとぉ……」
机についた俺の手を、拓斗がぎゅっと握る。俺の腕がぴくりと震える。
「たくと、も、だめぇ!」
拓斗が俺のうなじを噛む。俺は達し、俺が吐き出した液体が、参考書に飛び散った。
「うわ!」
俺は慌ててティッシュの箱に手を伸ばしたが、その手を拓斗が押さえた。
「まだだよ」
「やっ! だめ、たくと」
拓斗は俺の上体を机に押し付け、片足を持ち上げて拓斗のものを捻り込む。
「やあぁ! あん!」
あまりに深くまで刺さるように抉られ、俺の口から悲鳴のような喘ぎが飛び出す。
「ひぁあ! たくと、や、だめぇ!」
拓斗はずんずんと俺の中を突き上げる。拓斗のものが俺の体に溶け込もうとしているみたいだ。
「いやぁ! もう、ああ!」
自分が何を言っているのかよくわからない。ただ、無意味に音が飛び出していく。
「春樹、いくよ」
拓斗のものから勢いよく、粘る体液が俺の中に注ぎ込まれる。
「あぁ……、ふぅん、くん」
俺は甘い声で拓斗を誘う。
「まだ足りないんだね」
拓斗がずるりと俺の中から出ていく。
「あっ、はぁん」
その刺激にも感じてしまう。
拓斗は俺の体を抱き上げると机の上に乗せた。正面から抱き締めキスをする。
その唇が首に、胸に、内腿に落ちていく。
「んっ、ん」
なかなかその場所に触れて貰えず、俺の腰が蠢く。
「我慢できない?」
拓斗が俺を見上げる。俺は小さく頷く。
「どうしてほしい?」
「……舐めて」
拓斗は見せつけるようにゆっくりゆっくりと俺のものを舐めあげる。うらの筋をたどり、先端をアイスを舐めるようにぺろりとくすぐり、茎を横からくわえる。
「はぁ……ん」
俺のものから再び透明な液体が垂れる。拓斗のものも硬く立ちあがっている。
俺はそれが欲しくてたまらなくなる。
「たくと」
「ん、なに?」
「たくとがしたいこと、して?」
拓斗はにやりと笑うと、ゆっくりと俺の中に入ってきた。
「んっ」
片手で俺の両手を押さえつけると、片手で俺のものの根元を掴んだ。
「い……ったあ!」
「僕のしたいこと、だよ。ちょっと我慢してね」
そう宣告して、拓斗は勢いよく動き出した。
「あ、あぁ! やっ! いやぁ!」
押さえつけられた手首が揺すられるたびに机に擦れる。握りしめられた根元がびりびりと痛む。
「あぁ! いや! はなしてぇ!」
「春樹、君のなか、すごく締まるよ。痛いの好きなの?」
「きらい! いや!」
拓斗がくすっと笑う。
「嘘ばっかり」
がんがんと拓斗が突き上げる。手も下も痛いのに、なぜだろう、後ろで感じる快感が普段とは桁違いだった。
「ああん! いい! たくと、あぁ!」
拓斗は無言で俺を追い上げる。俺の後ろはぐちゃぐちゃでいやらしく水音を立てる。
「たくと、たくとぉ!」
拓斗に抱きつきたい。今すぐ精を吐き出したい。
どちらも叶わずもどかしい。拓斗は完璧に俺を支配していた。
「春樹」
「たくとぉ、くるしい……」
「春樹、好きだよ」
拓斗が深い口付けをくれる。口中に舌を差し込まれ、俺は思いきり吸い付く。
「んっ、ふぅ」
お互いの唾液をすすり飲み、軽く舌を噛む。
拓斗が俺の両手を離した。俺は拓斗の背にしがみつく。
拓斗が激しく俺の中に捩じ込むと同時に、俺のものから手を離した。
「ひああぁ! ああぁ!」
一気に爆発した。拓斗が俺の中に放つ。俺からも同じものが迸る。
あまりの愉悦に視界が真っ白に染まる。
俺はしばらく気を失っていたらしい。目を開けると、拓斗が俺の手首についた傷を舐めていた。
「っつ!」
わずかに沁みて、声をあげた。拓斗はかまわずに舐め続ける。
「……お前、犬みたいだな」
拓斗は上目使いに俺を見上げ、にこりと笑う。
「君は僕のこねこちゃんだね」
「なんだよ、こねこちゃんって」
「みゃあみゃあ啼いてミルクを欲しがる。今日のミルクは足りた?」
かっと顔が赤くなったのを感じた。
さっきから腕を舐められ続けて、俺のものはまた立ち上がりかけていた。
「……お前はどうなんだよ」
「僕はいつでも飢えてるよ」
「……もっと……飲む?」
「わん」と鳴いて拓斗が俺のものに食いつく。そのまま食いちぎられそうな勢いで拓斗は俺を味わい、啜り、喉の奥に飲み込もうとする。
「んっ、ああ……ん」
拓斗の手が俺の後ろに忍び込み、良いところを擦る。
「きやあ! あん! や……だあ!」
俺はすぐに精を吐いた。拓斗は美味しそうに啜り飲む。もう俺の中身は空っぽだ。
それでも俺の体は、拓斗を求めて離さない。
拓斗はいつまでも俺のものをしゃぶり続けた。
「あーあ。ぐしゃぐしゃだな」
参考書は白く濡れ、俺に踏み潰され、かわいそうなほどよれよれだった。
「けどこれで、五感のうち四つも使えるようになったよ」
「なんだ、それ?」
「視覚、聴覚、触覚、そして嗅覚」
「……嗅覚」
「これから参考書をめくるたびに今日のことを思い出すよ」
「きょっ、今日のことって……」
真っ赤になった俺の頬に口付ける。
「僕のこねこちゃん、勉強が終わったらご褒美をあげるからね」
俺は俯き、小さく「みゃあ」と鳴いた。
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