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第2話
俺は背も高く、骨格もしっかりしていて、顔つきも男らしい部類だ。……俺の姿形はどこからどう見てもαである。華奢な体つきで、精神的にもどこか脆弱な性質の者が多いΩの特性からは大幅にずれている。たとえ自分がΩだと主張しても、いったいどれほどの人間がそれを信じるだろうか。――と疑心暗鬼になるレベルで俺は一般的なΩ像から逸脱していた。
だからというわけではないが――。
俺は家族に自分がΩであることを秘密にしてくれるよう頼んだ。
家族はあまりいい顔をしなかったが、なんとか説得し、高校卒業までを期限に自分の「性」をαで押し通すことにした。
家族以外には誰にも明かせぬ秘密を、中二の夏、俺は持つことになった。
果たさねばならない約束があった。
それは、αでなければ果たせない約束だった。
兄から可愛げがないと太鼓判を押されるくらい愛想のない俺にも、一人だけ特別に親しく交流している友がいる。
――殿塚 薫 。
親友でライバルで、同志。
幼馴染に近い間柄で、同じ中高一貫校に通う同級生でもある。
俺たちが中学一年だった頃、季節外れの転校生により学園が荒れに荒れた。
高等部の生徒会は崩壊、その煽りを受けて風紀委員会は機能不全に陥った。元々両組織の仲は悪く、無意味に張り合っているがために連携もとれておらず、一旦バランスを失えば、そこから学園の秩序が崩壊するのは早かった。
当時、高等部一年生だった俺の兄の望はその騒動に巻き込まれ、――あわや集団暴行の標的にされかけた。望はなぜかΩであると噂され、それを真に受けた馬鹿な連中に誤解されて、あろうことか――輪姦 されそうになったのだ。
俺と薫がいち早く情報をキャッチし、間に合ったからなんとか阻止できたが、あの時は本当にぎりぎりで、今でも思い出すとぞっと肝が冷える。
俺と薫は親友でライバルで同志。
身長も同じくらい。
体格も同様。
成績もトップを二人で争い、部活は違っても残す実績でやはり肩を並べて競った。
バレンタインのチョコの数では負けたが、中学卒業時にもらった花の数は俺の方が勝 った。
下の毛が生えたのは俺のが一足早かったが、精通は先を越された。
くだらないことから、他人に誇れるものまで、俺たちは何に対しても張り合ってきた。
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