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第3話

 お互いを認め合い、高め合い、切磋琢磨し、――共に歩む。  ずっと、そうやって、生きていけるのだと、そう思っていた。  二人の歩む道が別たれるなど、想像したこともなかった。 「俺らが高校いったら、絶対にこんなこと、許さねぇよ」 「…ああ」  望を助けた後、薫は決意をこめた瞳で俺に誓った。  藍色の不思議な光輝を放つ瞳は、深く相手の心を捕らえる武器になる。きっと薫はすでにその時それを自覚していた。俺はその瞳に魅了される。 「俺が生徒会長になるから、おまえは風紀委員長になれ」  命じるのに慣れた口調。  そして、どんな相手をも従わせる強い覇気。 「αだから優秀なんじゃねぇんだよ。αだって間違える。……αでメンバーを固めた生徒会も、(あやま)ちを犯した。俺の間違いを正すのはおまえだ。そして、おまえの間違いを正すのは俺だ。俺たちは、あろう」  薫は生粋のαだった。  そして、俺も――その時にはなんら疑うことなく、自分をそう信じていたんだ、……薫。  時が過ぎ、高校生になった俺たちは、誓い合った約束を実現させた。  薫は生徒会で辣腕をふるい、俺は風紀委員長として、学園の秩序を守るために奔走した。  ――薫をはじめ、誰も俺をΩだと見抜く人間はいなかった。  ヒートと呼ばれる発情期は、薬で抑え込んだ。  それはかなり強い薬で身体への負担は大きかったが、医者に頼み込んで処方してもらった。  俺たちは最終学年になった。  卒業まで、あと一年に迫っていた。  ――あと、たった一年乗り越えれば、もうそれで充分だった。  約束を果たし終え、そして――……、  高校卒業と同時に、俺は薫と縁を断つことをすでに心に決めていた。  αとΩで共に並び立つことは、きっとΩの特性を考えれば難しい。足を引っ張るくらいならば、潔く離れた方がマシだった。なにより、……薫にだけは、他の誰よりも自分がΩであると知られたくなかった。  このまま何事もなく卒業できるだろうと、俺の中にいささかの慢心があったように思う。  中二から高三の今日までの約四年間、多少の波風やトラブルには見舞われたものの、薫と二人ですべて乗り越えてきたし、俺の本当の「性」がバレることもなかった。  俺は相変わらずΩらしくないΩだった。  幸いなことに、抑制剤でも抑えきれないようなヒート状態になることも今までなかった。  ……あんまりにもΩらしくないので、何度か再検査もしていた。  しかし、望み虚しく結果が変わることはなかった。  俺だけでなく、きっと家族も、未だに俺がΩであると納得できない気持ちがあったのだと思う。  ――そんな俺の足元を掬うように、そいつは現れた。

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