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救出
視界を横切りアペに体当たりした獣は、狼だった。その逞しい体つきの狼は、地べたに転がったアペに向かって更に攻撃をしようとしていた。
だが背中を見ただけで分かったんだ。
お前はロウだ!
どうして姿が半獣でなく完獣になってしまったのか分からないが、お前はロウだ!俺の目に狂いはない。
狼は獰猛な遠吠えを轟かせカッと鋭い牙を剥き、アペに今にも襲い掛かろうと大きくその上体をしならせた。
「グゥゥ──オォー」
「たっ助けてくれ!喰われる!」
アペに逃げる隙を与えないように、岩場に追い詰めていた。 その光景でようやく我に返り、俺はアペによって乱された着衣のまま狼の背中に抱き着いた。
「駄目だ!ロウ!お前はそんなことしちゃダメだ!喰うな──!」
すごい抵抗で振り払われそうになる。ロウは正気を失っていた。
背中の毛は凍りそうに冷たく血でぐっしょりと濡れていた。でもその背中から微かにロウの匂いが感じ取った。だから俺は一層の力をこめて、ロウを抱きしめてやった。
「ロウ!お前の名はロウだ!思い出せ!」
必死に背中にしがみついて、その名を何度も呼んだ。
名を呼べば、愛しさがこみ上げる。
「どんな姿になってもお前は俺の番だ。だから戻って来てくれ。俺と帰ろう!俺達の家に!」
「グウウゥ……」
ロウは漸く俺を振り返った。その目に燃えていた闘志の炎は消えつつあった。やっと……いつもの静かな青い目に戻ってきている。
だから俺はロウに口づけた。
いつものように、優しく愛情をこめて。
「ロウ落ち着けよ。憎しみに溺れるな。溺れたら負けだ」
そう囁きながらモフモフの毛を撫でてやる。また氷のように冷たくなってしまった毛だったが、俺が撫でた所から溶けて行く。
暫くしてロウは伏せのような姿勢をとり、俺に背中に乗れと合図してきた。だから地べたに転がされていたトイを俺は急いで掻き抱き、その背中に乗った。その時になってトイも目覚め、あどけない目で俺を見つめてきた。
「あぶぶ……」
トイ……無事で良かった!
「ロウ!行こう!」
俺がロウの背中にしがみつくと同時に、ロウは勢いよく走り出した。
「待て!トーチ、俺が悪かった。許してくれ!あんなことした俺を……お前は助けてくれたんだな……ありがとう」
後ろからアペの声がするが、振り返らない。それでもアペはずっと叫んでいた。
「トーチっトーチ……元気で!いつか帰って来いよ!また会えるよな!俺はお前たちを受け入れるからな」
アペ……正気に戻ってくれて良かった。お前は大事な友だ。
****
俺達は一旦、トプカチの地に舞い戻った。
何よりロウの背中の傷が痛々しかった。俺のために捕まって、鞭で打たれてしまったのだ。これ痛かったよなこれ。
この地に戻ってくるとロウとは、また言葉で会話できるようになった。
「ロウ……お前は馬鹿だ。無理をして。こんなに傷ついて、俺に心配をかけて」
「トカプチ、勝手な行動をしたオレが浅はかだった。そのせいで憎しみに支配され、オレはもう半獣ではなく完全に狼になってしまった。こんな姿では……もう」
「馬鹿だな。お前がどんな姿でも構わないんだよ」
ロウの背中に包帯を巻きながら、優しくそこにキスをした。人の皮膚だった背中には、今はびっしりと狼の毛が生えている。どこから見ても大型の狼でしかないお前だが、そんなことはもう俺たちの間には関係ない。
「トカプチこそ、無事か」
そう問われて自分がなんとも憐れな姿をしていることに気が付いた。
シャツははだけ胸は暴かれ、複数の跡が痣になっていた。そして触れられた下半身が濡れたままで気持ち悪かった。
「ロウ……実はあの時、番の印が冷たくなって……俺は発情期を迎えてしまった。だからアペが正気を失い、あんなことを」
「なんだと!アイツに触れられたのか。あの男に!」
「おっ落ち着けって!なっ何もなかった」
「本当か」
青い水晶のような瞳でじっと見つめられたら、嘘はつけない。
「うっ……すまない。乳を吸われた……少しだけ」
「何だと!本当にそれだけか」
「……あと下半身も少し」
「なんだと!」
「クソっ全部オレが消毒してやる。脱げ!」
「えっ!わっ!待てよ」
ロウの牙であっという間に服を裂かれ裸にされた。そのまま藁の上にポンっと投げ出され、ロウの長い舌で舐められた。
「くすぐったいって……あっ……」
くすぐったいだけじゃない。気持ちいい。
アペに触れられた時は嫌悪感しか湧かなかったのに何でこうも違うんだ。ロウが触れてくれる箇所は、どこもかしこも温かく心地よくて……ううっ……感じてしまうよ!
「このまま、お前を抱きたい。だがオレは完獣になってしまった
「馬鹿だな。ロウ……お前が半獣でも完獣だろうが、構わないよ。俺は受けれ入れる。お前のこと愛しているのだから、俺を迷わず抱けよ。俺も抱かれたいと思っているのだから」
「トカプチ……いいのか。お前を傷つけないか心配だ」
「大丈夫だ。安心しろ、それに俺も……もうこんなに感じてる」
ロウに全身を隈なく舐められたことにより、俺の蕾からはトロトロの液が溢れ出し、小振りな屹立はきゅっと勃ちあがっていた。
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