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我が家の日常

 朝食を食べていると玄関のチャイムが鳴った。玄関の外から友人の声がする。 「そーぉたくーん! あーけーてー!」  毎朝毎朝コレだ。まだ7時半だと言うのに大声出しやがって。食べかけの茶碗と箸を置き、玄関の外の阿呆を迎えにいく。 「おはよう、マイハニー!」  玄関の扉を開けて早々、引っ付いてくるこの友人は和馬。俺と同じくらいの背丈で175センチと割とでかいが、少し茶色い天然パーマが、リビングのソファーに座った大きなテディベアを彷彿とさせる。幼稚園から高校卒業間近の今日まで、何故かクラスが離れたことのない腐れ縁だ。とんでもねぇ確率だなといつも思うんだよ。  友人を連れて食卓に戻る。そこには食べかけの俺の分と智紀さんの分、それ以外にもう1食用意されていた。 「おはよう、和馬くん。今日も食べてくだろ?」 「わぁい! いつもあざっす!」  高校に上がった辺りからこいつもうちで朝食をとるようになった。放っておけばいいのに智紀さんもノリノリで用意するもんだから口を挟めないでいる。  用意されたものをすべて平らげて家を出る準備をする。ワイシャツの上にパーカーを着て、その上から学ランを着る。立春を過ぎたとはいえ2月は冬並みに寒い。つか、冬だよ。 「ふぁ~あ。朝っぱらからうるせぇんだよ」  親父が腹を掻きながら階段を降りてきた。ヨレヨレでボロボロになった灰色のスウェットにボサボサの髪の毛、放ったらかしの髭は不潔感極まりない。 「親父こそ、そのだらしなさどうにかしたらどうなんだよ。智紀さんをちょっとは見習ったら?」 「うるせぇな。早く学校行けよ」 「そんなんじゃ、愛想つかされるのも時間の問題だね……」 「んなわけねぇだろ。何年連れ添ってると思ってんだ」 「知ってるよ」  また惚気話を聞かされる前に、とっとと家を出よう。 「おーい、和馬。先行くぞー」  玄関で靴を履き、まだ朝飯を食べている和馬に声をかける。するとドタバタと慌ててやってきた。 「待って、爽太。何でお前はこう、先に行こうとするのかな?」 「お前が遅いからだよ」 「ぐぅ……」  図星を突かれて“ぐう”の音しか出ないやつはお前くらいだよ。  奥にいる両親に声をかける。 「いってきまーす」 「智紀さんゴチでしたー」 「いってらっしゃい」  これがうちの日常だ。

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