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②
「俺にキスしろ」
俺の提案に和馬は身を乗り出した。
「えっ!」
「俺が『嫌だ』と感じなければ付き合ってやる」
「えっ? ホント? よ、よぉーし!」
チャンスがあると分かった瞬間、和馬は目に見えてはりきり始めた。
和馬は俺の肩を掴み、すぐ横のベッドに俺が寄りかかるよう体制を変えた。背中がベッドのスプリングを少し軋ませる。
「ほ、ホントにいいのか?」
「早くしないと気が変わるぞ」
「だめ!」
和馬は俺の肩に手を添えたまま目をギュッと瞑る。震えながら唇をウーっと尖らせて近付く顔が面白くて可愛い。
「ふふっ」
「何笑ってんだよ!」
思わず笑いが出てしまった。
「悪い。あまりにも必死な顔してるから、つい」
「必死だよ! こっちは初恋が叶うかもしれないんだから!」
「ごめんって」
俺は和馬を自分の太腿の上に座るよう促した。
「でももう少しムード作れよ」
「ムード?」
「こうやってさ」
左手を和馬の腰に回し、右手で首筋を撫でて栗色の癖毛に指を差し込む。それからゆっくりと頭を引き寄せていくと、和馬が目を瞑ったので、そっと唇を触れさせた。
眼鏡のフレームが邪魔に感じたが、目の前とはいえこれを外してしまうと相手の顔がはっきりと見えなくなる。せっかく面白いものを見られてるのにボヤけた視界ではもったいない。
柔い唇を放すと、和馬がゆっくりと瞼を開いた。
「こうやってムード作るんだよ」
「お、おう……」
「はい、どうぞ。やってみてください」
「えっ!? 今のじゃダメなの?」
「俺はお前に『キスしろ』って言ったんだよ。今のは俺からしたからノーカン」
「意地悪いなぁ」
「気が変わっちゃうぞ」
「わーったよ!」
和馬は俺の上から降りるとベッドに腰掛けた。
「はい、ここ来て」
さっき俺がやったみたいに腿をポンポンと叩いている。
「はいはい」
ムードもクソもない誘いだが、素直に俺の行動を真似する姿が面白過ぎた。また笑いが込み上げてくるが、ぐっと堪える。
誘われるがままに、和馬の膝に跨ろうと右膝をベッドに乗せた。
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