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第7話
帰りの電車は混んでいた。帰宅ラッシュと重なったようだ。ぎゅうぎゅう詰めで久しぶりのラッシュはキツイ。朝の通学ラッシュが嫌で早めに登校してる俺には辛い時間...でも、今日は渋谷がいるから大丈夫。
と思ったのに移動する人の波であっという間にはぐれてしまった。
こんな格好なのに、1人って辛い……
流されて奥の隅っこに追いやられてしまうし。目立たないように体を小さくする。早く駅つかないかな。この調子じゃ、渋谷にバイバイも言えないや。
さわ。さわわ。
電車の振動で揺れるのか、よく人の手が当たる。知らない人に触れるの、嫌だなぁ。
ガッタン
大きく揺れた時、かすかに触れていたソレは明らかな意志を持って...俺のお尻に触れた。いや、鷲掴んだ!!
「...っ!!?」
大きな手は、俺の片方のお尻を楽しむようにむぎゅむぎゅ触ってくる。
え?え?え?えぇ?ち、痴漢?マジ?や、俺、こんな格好だけど男だよ?いや、俯いたから女の子に間違えた?でも、女の子みたいに柔らかくなんてないよ?
1人パニック。
とりあえず、お尻に触れている手を掴んだ。駅員に突き出して...待てよ。俺、今、女の格好してる...駅員に告げる...女装バレる...何やってんだ?ってなる...学校にバレる...親に連絡...親、泣く...俺、辛い...
...言えない。
頭の中で瞬時に色んなことを考えていると、手の主が俺が何もしないと踏んだのか、もぅ片方の手で逆のお尻をもみもみしてきた。
「ひっ...!や、やめて下さいっ!」
小声でしか訴えられない。今なら、今なら無かった事にしてやるから早くどっか行けって!!そう心の中で叫んで、掴んでる方の手に力をこめる。やめろ!やめろ!!俺は男だって!!
ぶんぶん首を降ったり、体を動かしてみるけど一向に男の手が引く事は無い。
こ、怖い。怖いよ。怖すぎるよ!!
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