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第21話

「トマトみたいに真っ赤だよ。美味しそう」 意地悪い声が聞こえて振り向くとニヤニヤ笑った渋谷がいた。 「ば、ば、ばかっ!!」 慌てて そっぽ向くと、根津が珍しくニヤニヤ笑ってこっち見てた。 「...なんだよ」 「いや。別に」 その態度が、全てを知ってますって感じで気に入らない。でも、根津には敵わない。きっと帰りにでも素直に全部話してしまう自分がいるだろう。 「あ!今日から帰りは俺と一緒だよ、きぃ」 「へ?そうなの?」 「へー。良かったじゃん、希壱」 「女は一緒じゃないの?」 「俺も部活無かったら一緒に遊べるのになー」 渋谷と一緒に帰れるなんて嬉しい。顔に出ていたのか、渋谷も俺を見て優しい笑みを浮かべている。 「ちょっとーーー!!!渋谷 居る?」 朝からうるさい河田よりもテンション高い声と共に教室のドアが開く。 隣のクラスの女子が数人、連れ立って入ってきた。どちらかと言うと、目立つタイプの女子だ。 「んあ?」 渋谷は俺の頭を撫でていて、女子に視線すら移さない。 「ちょっ、聞いたよ!?本命できたって?」 次の瞬間、静かだった教室内がざわついた。 「あー、うん。そう」 詰め寄られても渋谷は対して気にもしない様子で簡単に認めた。

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