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騒ぐ女を無視して中に入ると、そこには乱雑に散らかされた部屋が広がっていた。 足の踏み場も無いほどの物が、玄関から部屋までずっと積み上げられている。 よく見ると床にはブランドもののバッグやら靴やらが散乱しているようだ。 これ全部売りゃ、それなりの金にはなるんじゃねーの?ま、全部は返せないだろうけど。 玄関の方ではまだ柚木と女が言い争っている声が聞こえてくる。 ブランド品の山をよけながらさらに部屋の奥に進んでいくと、隅の方にバスタオルが丸めて置いてあるのが目に入った。 バスタオル...? 散らかっている部屋で、何故かそのバスタオルの周りだけ物が置かれていない。 不思議に思った獅琉が近づくと、そのタオルは何かを包んであるようだった。 まさかあの女...ヤクやってるわけじゃねーよな? 獅琉は眉を寄せながらバスタオルの横でしゃがんで、少しバスタオルを持ち上げた。そして、想像もしていなかった光景を目にする。 そこに在ったのは真っ白の赤ん坊だった。 あ...?なんだこれ...人形か? ぴくりとも動かないそれを不思議に思った獅琉は赤ん坊の頬をつつく。 ふに...とへこんだすべすべの頬の感触は確かに人の肌で。 「柚木!!!!」 獅琉は咄嗟に部下の名前を読んだ。 「若!!どうかしましたか!!」 すぐに柚木が女の腕を掴んだまま部屋に駆け込んでくる。 「やめなさいよ!!離してよ!!!」 何やら喚いている女は無視して柚木に言う。 「ここに、赤ん坊が。生きてんのか知らねーが...そいつの子か?」 「え、赤ん坊??いえ...そんな情報はありませんでしたが...」 困惑している柚木の声を遮るように女が割り込んでくる。 「そ、そうよ!!そいつがいたわ!!それ、売ってもいいわ!いくらかお金になるでしょう?堕ろすお金もないから産んだだけなのに、白くて気持ち悪いし、処分に困ってたのよ!」 嬉しそうに言う女の言葉に耳を疑う。 それ?この赤ん坊のことか? 売る?この赤ん坊をか? 女の腕を放した柚木が獅琉のそばにしゃがみ、赤ん坊を見る。 「若、この子、息はあるみたいですね。相当衰弱してますが...」 その言葉に獅琉は赤ん坊を抱き上げて言う。 「そうか、分かった。俺はもう出る。」 「はい。この女、どうしますか。」 「そんなクズ、金がないのならどこへでも売り飛ばせ。」

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