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2つ目に苦手なのが注射。
体が小さく弱かった麗は何度も注射や点滴を受けてきた。元々麗は痛いことや怖いことが大嫌いだ。注射の度に大泣きする麗は、獅琉に宥められてなんとか乗り越えてきたのだ。
それは現在でも変わらず、獅琉が忙しく家から離れる日が続くと食事も睡眠も満足にとれない麗は度々体調を崩し、点滴を受けている。
点滴をすると知れば麗が泣くことを知っている獅琉は、前もって点滴のことを麗に知らせないでいた。
そして今日はその点滴の日。
お気に入りのソファの上で、獅琉の膝に乗せてもらって甘えながら過ごしていると、背中をとんとんと優しく叩かれた。
「麗、お前また痩せたろ。柚木がご飯持ってきただろ?ちゃんと食え。」
自分では痩せた自覚はないのだが、骨が浮いて見てる腕は、確かに獅琉の逞しい腕とは比べ物にならないほど細い。その腕を軽く持ち上げられて、麗は少し唇を尖らせた。
「んん...ぼく、おなかすかない...」
「んなわけねーだろ。お前がまともな生活送れないんじゃ俺だって心配して仕事になんねーだろうが。」
「だって…」
「だってもクソもあるか。お前、チビのくせに俺を困らせんな。」
その言葉に麗は不安そうに獅琉を見上げる。
目が合った獅琉は、少し怒っているように眉を寄せていた。
「しー、こまる?」
「ああ。お前が元気じゃないと、気が気じゃねえよ。」
獅琉を困らせていると知った麗がごめんなさいと謝ろうとすると部屋のドアがノックされる。
だれ?ユズ?
麗が不思議そうにドアの方を向くと、外から声が聞こえてくる。
「麗くん、久しぶりだね。山瀬だよ。」
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