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「うわああああぁっ...!しーっ...ぅうえっ...ひっく...しぃ...っ」
大泣きしながら獅琉にしがみつく麗を抱き上げて立ち上がり、泣きやませるためにあやす。
白い頬を真っ赤に染めて、鼻水も涙と一緒に流れ落ちる様は、正に子ども。強面の顔に似合わず、泣く子の扱いに慣れている獅琉は、麗の旋毛に軽く唇を落としながら体ごとゆっくり揺らした。
「あー、ほら麗泣き止め。もう終わったぞ。頑張ったな。」
泣きながらも、弱々しく頷く麗。こんなにいい子なのに月に何度も腕に針を刺さなきゃいけないなんて、獅琉も心が痛い。
獅琉は目線で山瀬にもう帰っていいと伝える。
片付けを終えて鞄を持った山瀬が、その視線を受けて立ち上がりながら言う。
「はいはい、呼び出しといて用が済んだらとっとと帰すんだから...。」
「ああ、ありがとうな。それじゃ。」
「帰ればいいんでしょ、帰れば~!明日の朝針だけ抜きに来るからよろしくね~。またなにかあったら連絡してね!麗くん、ばいばい!」
山瀬は笑顔で麗に手を振って部屋を出ていくが、麗がその声に反応することはなかった。
「うぅっ...ふぇぐっ...うぇぇっ...」
「れーい、山瀬帰ったぞ?」
山瀬が去った後も、未だに泣き続けている麗にどうしたものかと獅琉は困り果てた。
このまま泣いてると過呼吸になりかねないな...
麗は過去に何度もそれで過呼吸を起こしている。
「麗、落ち着け。ゆっくり息しろよ。」
麗を抱いたまま点滴を点滴スタンドにぶら下げ、寝室まで移動する。そのままベッドに腰掛けて、獅琉は優しく話しかけた。
「いい子だから泣き止め。な?」
「うええっ...ふぇぇ...ふうっ...うう...ひっく...」
ヘッドボードの上に常備してあるティッシュで、麗のマシュマロのように柔らかい肌を傷付けないように涙を拭っていく。
「...ぅっ...ひっく...ふっ...ぅ..っ」
その間に少し落ち着いたのか、麗の嗚咽も小さくなる。
「麗?」
「んっ...ひっく...しぃっ...」
「ここにいる。」
「...っぅ...ひっ...しぃ......」
獅琉の首に抱き着いて泣いていた麗の呼吸が、段々静かになっていく。
「麗?」
「...ん」
そのまま、麗は泣き疲れたらしく、うとうとと船を漕ぎ始めた。子どもは本当に目まぐるしい。笑っていたと思っていた次の瞬間には、大声で泣き叫んで、かと思ったらふとした拍子に笑顔に戻って、突然電池が切れたように眠る。
獅琉は麗をベッドに寝かせ、自身も隣に寝転んで柔らかな髪を撫でた。
麗の手は、しっかりと獅琉の服を握っている。
「しー...」
「点滴終わるまで寝とけ。ここにいるから。」
「ん…」
暫くすると、麗は大きな瞳を閉じて眠りについた。
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