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背中と同じように前も優しく洗っていくが、脇腹の辺りを洗っていると、くすぐったいのか麗の体がびくびくと震え出した。
「ふふっ...」
鈴が転がるような笑い声を零しながら、体を捩る麗。
「おい麗、じっとしてろって言ったろ。」
獅琉に軽く嗜められて、麗は慌てて口を手で押さえる。
「ふっ...ぅっ...ん...」
必死に笑いを堪えようとするが、両手の指の間から吐息のような声が漏れてしまっている。
きゅうっと瞼を閉じて、白い肌に映える火照った頬。
可愛いっうか、なんかこいつ...エロい..
「...麗」
「んっ...しー?」
麗のその姿に、獅琉は思わず体を洗う手を止めた。麗は首をこてんと傾げて不思議そうこちらを見上げる。頭の中で鳴り響く警鐘は、どんどん大きくなっていく。
だめだ。俺は、こいつの保護者なんだから。全ての信頼を向けてくる麗を裏切るなんて、だめだ。大体なんでこんなに無自覚なんだこいつは...。自分の見た目分かってんのか?誰がこんな風に育てたんだよくそ...。
獅琉が甘やかして育てたせいで生粋の天然に育ってしまった麗に項垂れる。
「しー、どうしたの?どこか、いたい?」
返事のない獅琉を心配し始めた麗が獅琉に手を伸ばす。
またお前は簡単に俺に手を伸ばす...俺がお前にどんな気持ちを抱いてるかも知らないで...。自分がどんな人間に拾われたのかも。
獅琉は小さく舌打ちをして泡だらけのその手を掴み、ぐいっと自分の方へ腰を引き寄せた。細い体が簡単に腕の中に飛び込んでくる。獅琉はそのまま麗の小さな耳に噛み付いた。
「ひゃぁっ...」
突然の痛みに驚いた麗の肩が跳ねる。
二度三度と軽く噛んでから口を離すと、麗の真っ白な耳に赤い歯型が付いていた。
麗は目を瞑って肩を竦めたまま動かなくなっている。
「麗」
獅琉に名前を呼ばれてゆっくりと目を開く麗。
「っ...しー、おみみ...がぶって...」
獅琉が噛み付いた方の耳を押さえながら、大きな目を更に大きく見開いて呆然としている。
その顔が余りにも間抜けで、少し笑ってしまった。
「お前が無防備すぎるんだよ...んな風にボーッとしてると食われちまうぞ?」
体を離して改めて見た麗の顔は真っ赤。
ったく言ってるそばからこいつは...
獅琉は結局麗が先に風呂から上がるまで、今すぐ組み敷いて麗を犯したいという欲望を抑えるために己の理性と必死に戦っていたのだった。
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