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「あの、麗さ...」
反応を示さない麗の顔を、柚木が心配そうに覗き込む。その柚木と目が合って、麗の涙腺が一気に緩んだ。
「う...ふぇ...」
うう...びっくりした...ころんじゃうかとおもった...
麗の目にはみるみるうちに涙が溜まっていく。
その様子を見て焦ったのは柚木だ。
「えっ!麗さん、泣かないでください!どこか痛いですか?」
体を揺らし、麗の背中を撫でるが、麗の瞳に浮かぶ涙は膨らんでいくばかり。
「ん...っ...う...」
大好きなユズを困らせている、と分かってはいるが溜まった涙は今にも頬に流れ落ちそうだ。
不意に、背後から声が聞こえた。
「柚木、貸せ」
「はいっ」
流れるように、柚木から獅琉へと渡された麗。すぐに獅琉の首にしがみつく。誰よりも安心する体温を感じて、麗は鼻を啜った。
「し、しぃ...っ」
「びっくりしたなー、麗。今度からは気付けろよ?」
「ん...」
その言葉に、麗は何度も頷いた。獅琉はそのまま麗を慰めながらカーペットの上に座り、濡れたままの麗を膝に乗せてドライヤーのスイッチを入れる。
「このまま髪乾かすからな。」
「ん...は、ぃ...」
ぺたりと張り付いていた白くて細い髪を、獅琉の大きな手で梳きながら乾かしていく。
乾いていくうちに麗の髪はいつもの様にふわふわになった。
しーのて...きもちい...
ドライヤーの心地よい温度と、獅琉の優しい手にうとうとと微睡んでしまう。
「よし、乾いたぞ。麗?寝るなよ?」
船を漕ぎ始めた麗の頭を揺らすように撫でる獅琉。麗はごしごしと目を擦って眠気に耐えた。
「んんー...」
「今日飯食わないならまた点滴だぞ」
「...や...」
「じゃあ起きろ。柚木!」
「はい、準備できてますよ。麗さんにはお粥用意したんですけどよかったですか?」
「ああ。」
再び獅琉に抱えられ、麗はテーブルへと移動した。
椅子に座った麗は柚木の作ったお粥を見て笑顔をこぼす。
「おかゆ...!たまごの...っ」
「そうですよ!麗さん好きでしたよね?今日は食べてくれますか?」
「んっ、ぼくユズのおかゆすき...」
「は...、麗さん可愛すぎます!!!」
「お前にはやんねーよ。麗、ゆっくり食べろよ。」
「おかゆ...」
獅琉は既にお粥のことしか頭にない麗にスプーンを渡し、髪が邪魔にならないように耳にかけてやる。
「麗さん髪伸びましたよね、そろそろ切り...あ。」
そう言いながら麗の髪を見ていた柚木が、動きを止めて気まずそうに獅琉を見た。
「あ?なんだよ?」
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