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麗は獅琉の質問には答えず、俯いてしまった。
やはり、答えにくい質問だっただろうか。
「麗?...別に答えは今すぐ出さなくてもいい...麗が出ていきたくなったらいつでも…俺に言いにくいなら柚木でもいい。言え。一人きりで放り出したりしない。ちゃんと麗が生きていけるように手配はする。」
「ぼく...おそと、きらい...」
「あー、そういうことじゃなくて...俺と一緒にいたくなくなったら...別の家に行ってもいいってことだよ」
「...」
「麗、どうした...?」
顔を俯かせたままの肩に手を乗せると、麗はピクリと肩を震わせた。
「...っぅ...」
麗から聞こえてきたのは小さな嗚咽を漏らす音。想像もしていなかった反応に、獅琉は焦った。
「麗...っ、泣いてん...」
「もう、いらないの...?」
「...は?」
「ぼく...っも、ぅ...いらない?しーの...うさぎさ...っ...めだったのっ?ぼく、ね...ぇっ...がんば...ぅ...っから...ふぇっ...しぃ...っ...れぃっ、いぃこにすぅっ...」
「麗っ、落ち着け」
「やあぁっ、れい...っうさぎさ...ぅっ」
「分かってる、麗が悪いわけじゃない。」
「んんっ...れい、いいこにするっ...から...ひっく」
すっかりパニックになってしまった麗。
やばいな、一人称が麗に戻ってる。
「落ち着けって、俺の話聞け。麗、」
「やらぁっ...!ううぅ...っ...れい、しぃのっ...ふっ...」
背中を摩って麗を落ち着かせようとするが、一向に泣き止む気配はない。
「ふぇ...ぅ...っ...は...っ...ゲホッ、はぁっ...しぃ...ヒュウッ...はっ...」
段々とその呼吸が荒く、苦しそうなものになってきた。明らかに過呼吸の症状が出てきている。
「おい!麗っ!」
「はぁっ...はっ...ふぅっ...ゲホッゲホッ...」
「この馬鹿...!」
獅琉は麗の体を離して、自分の服の袖を麗の口元に押し付けた。
「ゆっくり呼吸しろ。吸うだけじゃなくて、しっかり吐け。」
「んんっ...ふっ...はあっ、は...っ」
「そう、上手だ。」
「ふ...っ...はぁっ...」
次第に麗の呼吸は落ち着きを取り戻し、暫くすると泣きつかれて眠ってしまった。
それでも麗の手は獅琉から離れないとでも言うように、強く獅琉の服を握り締めたままだった。
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