28 / 43

5-6

麗は獅琉の質問には答えず、俯いてしまった。 やはり、答えにくい質問だっただろうか。 「麗?...別に答えは今すぐ出さなくてもいい...麗が出ていきたくなったらいつでも…俺に言いにくいなら柚木でもいい。言え。一人きりで放り出したりしない。ちゃんと麗が生きていけるように手配はする。」 「ぼく...おそと、きらい...」 「あー、そういうことじゃなくて...俺と一緒にいたくなくなったら...別の家に行ってもいいってことだよ」 「...」 「麗、どうした...?」 顔を俯かせたままの肩に手を乗せると、麗はピクリと肩を震わせた。 「...っぅ...」 麗から聞こえてきたのは小さな嗚咽を漏らす音。想像もしていなかった反応に、獅琉は焦った。 「麗...っ、泣いてん...」 「もう、いらないの...?」 「...は?」 「ぼく...っも、ぅ...いらない?しーの...うさぎさ...っ...めだったのっ?ぼく、ね...ぇっ...がんば...ぅ...っから...ふぇっ...しぃ...っ...れぃっ、いぃこにすぅっ...」 「麗っ、落ち着け」 「やあぁっ、れい...っうさぎさ...ぅっ」 「分かってる、麗が悪いわけじゃない。」 「んんっ...れい、いいこにするっ...から...ひっく」 すっかりパニックになってしまった麗。 やばいな、一人称が麗に戻ってる。 「落ち着けって、俺の話聞け。麗、」 「やらぁっ...!ううぅ...っ...れい、しぃのっ...ふっ...」 背中を摩って麗を落ち着かせようとするが、一向に泣き止む気配はない。 「ふぇ...ぅ...っ...は...っ...ゲホッ、はぁっ...しぃ...ヒュウッ...はっ...」 段々とその呼吸が荒く、苦しそうなものになってきた。明らかに過呼吸の症状が出てきている。 「おい!麗っ!」 「はぁっ...はっ...ふぅっ...ゲホッゲホッ...」 「この馬鹿...!」 獅琉は麗の体を離して、自分の服の袖を麗の口元に押し付けた。 「ゆっくり呼吸しろ。吸うだけじゃなくて、しっかり吐け。」 「んんっ...ふっ...はあっ、は...っ」 「そう、上手だ。」 「ふ...っ...はぁっ...」 次第に麗の呼吸は落ち着きを取り戻し、暫くすると泣きつかれて眠ってしまった。 それでも麗の手は獅琉から離れないとでも言うように、強く獅琉の服を握り締めたままだった。

ともだちにシェアしよう!