34 / 43
7-2
ズキズキと頭が痛み始めた。
沢山泣いたからだろうか。
頭も、心も痛い。
麗は部屋の入口の扉に目を向けた。
ぼんやりする頭で、大好きで大好きで堪らない飼い主のことを思い出す。
いつも優しくしてくれた。
僕の全ては、しーのおかげで今ここにある。
しーがいなきゃ、生きている意味が無い。
だけど僕がいたら...しーは、迷惑...なのかな...
たしかに僕は、しーの子供でもなんでもない。ただの、たまたま拾われてきただけの他人。ずっとしーと一緒にいられると思ってた。ずっと一緒にいたいと思ってた。でもしーは、それを望まないんだね。
じんわりと目頭が熱くなって、鼻の奥がツンと沁みた。
僕がしーのうさぎさんとしてできることって何だろう...?
唇を強く噛み締める。
僕が迷惑をかけないように、ここからいなくなったら...せめて、嫌いにならないでいてくれるのかな?
しーは僕のこと、好きなままでいてくれる?
麗はベッドから立ち上がって寝室を抜け、ぬいぐるみを抱いたままゆっくりとその扉に向かって歩き出した。
大丈夫、大丈夫。麗はしーのうさぎさんだから...いい子にできる。
泣いちゃダメ。
頬を流れ落ちる涙を何度も何度も拭いながら、麗は扉の前まで来た。
扉の前にぬいぐるみを置き、ドアノブに手を伸ばす。初めて触れた銀色のノブは、ひんやりと冷たい。麗の力でも簡単に開いてしまった。
よかった...鍵、かかってない。
麗は、最後に少しだけ振り返った。
「うーちゃん...バイバイ...」
大好きな匂いを肺いっぱいに吸い込んで、初めて1人で部屋を出た。
ともだちにシェアしよう!