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前回この部屋を出たのがいつだったか、はっきりと覚えていない。けれどいつも隣には獅琉がいたはずだ。だから一人で見る廊下は、見たことの無い景色のように見えた。 広い家の中でどこに行けば《外》へ行けるのか、そこがどんな世界なのかも想像できないが麗はとにかく部屋から離れるために廊下を歩いた。 おうち...こんなに広かったんだ...どっちに行けばいいのかなぁ... 広い廊下で勘だけを頼りにびくびくしながら歩いていると、突然後ろから襟元を掴まれた。 「ぅにゃぁっ!」 「おい、ガキ。ここで何してんだ。」 頭の上から聞こえてきたのは知らない声。 「ふぇ...っ」 大きな声と、ぐんと体ごと後ろに強く引かれた衝撃で止まりかけていた麗の涙が、再び溢れ出した。 「は、え…おいっ...何泣いてんだよ...!」 いきなり泣き出した麗に、男は慌てたように麗を抱き上げる。体がふわりと宙に浮かんで、眩しいほど鮮やかな金色の髪が見えた。 「泣くなよ...悪かった。ガキを怖がらせるつもりじゃなかった...」 「ううぅっ...しー...っ」 「ああ?何?ほら、泣きやめって。な?」 男は体を揺らして麗をあやそうとする。グズグズとしゃくりあげる麗は、てっきり怒られるものだと思っていた。 この人...こわくない? 麗がゆっくり顔を上げると見えたのはやはり、派手な金髪の男。細くて鋭い目が、こちらをしげしげと覗き込んでいる。 昔のユズと同じ色の頭だ... 麗がぽかんとしていると、男はニカッと八重歯を見せて笑った。 「お、泣き止んだか?」 「...」 無邪気な笑顔を見て、未だ呆けることしかできない麗。そんな様子に、男は更に笑う。 「ふっ...何ビックリした顔してんだよ~」 笑うと優しい目... 肩から自然に力が抜けた。 「それにしてもお前白くて綺麗だな~」 「う...きれい?」 「おー、綺麗だ。名前は?」 「ん、れい...」 「麗?またかわいい名前だな。」 「しーが...つけてくれたの...」 「へぇ?しー?そいつに着いてきたのか?どこからこの家に入った?」 「う?僕、ずっとここにいた...」 「は?ていうか僕?お前、女の子だよな...?」 「む...僕、おとこのこ...っ」 「こんなかわいい顔してんのに男?分かんねえもんだなー。」

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