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麗が1人でこの家を歩いたことは無い。玄関からは1番遠い部屋にいるし、なんといっても敷地が無駄に広いこの家。きっと外には出てないはずだ。そう言い聞かせながら、獅琉は廊下の隅々まで目を光らせながら麗を探した。 早く見つけねーと...っ 獅琉が住んでいる家は、東雲組の本家ではない。けれどヤクザの家に変わりはないのだ。いかにもな顔付きな男もいれば、血の気の多い野郎も、性格が破綻しきった人間もいる。 妙な奴に捕まってなきゃいいが... 獅琉は広い廊下を小走りで探す。白くて小さな男の子を見落とさないように。 血相を変えて廊下を急ぐ獅琉にどうしたのかと声をかけてくる奴らが何人かいるが、構っている時間はない。 「れいっ!」 どこかにいるはずの小さな姿はなかなか見つからない。 「くそ…」 どこ行ったんだよ...っ あいつのことだから知らない部屋に入ってることはねーよな... いやでも誰かにどこかの部屋に連れ込まれてたら... そんなことが頭に浮かんでぞっとした。大切に大切に守ってきた、宝物のような人なんだ。誰かに触られて、脅かされて、泣かされて、汚されでもしたら。想像するだけで背筋が粟立つ。もしそんなことがあったら、冗談などではなく犯人を殺すだろう。 いや、落ち着け。まだそうと決まったわけじゃない。落ち着け。考えろ。麗が逃げ込みそうなところを。 立ち止まってもう一度冷静になって考えてみる。やはり1人で探すより柚木と山瀬にも連絡しよう、と携帯を取り出すと近くから男の声が聞こえてきた。 何やら揉めているようなその声は聞き覚えがあった。 中平秀人(ナカヒラシュウト)。獅琉も信頼を置く優秀な部下だ。チャラついていて下半身の言いなりになりがちなところが玉に瑕だが、根は真面目で優しい男だった。 何を揉めてんだ...? 声のする方に廊下を進んでいくと中平の後ろ姿が見えてきた。 中平は両腕で何かを抱えているようだった。 「何してんだ、あいつ…」 更に近づくと、中平の背中越しに見えた真っ白な腕。思わず息を飲んだ。 「麗っ!!」 見えたものが何かなんて考えるより先に、体が動いていた。

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