41 / 43
8-4
今度はしっかりと鍵をかけて部屋に入り、獅琉はすぐに寝室へと向かった。じたばたと暴れる麗はベッドに放り投げて、腕をシーツに押さえ付ける。
見下ろした麗の頬には、涙のあとが幾筋も残っていた。
「おい。」
「や...っ!」
獅琉の視線から逃げるように横を向いた麗の顔を片手で掴み、無理矢理視線を合わせる。
「やじゃねーだろうが。なんでこの部屋から出たんだ。何回も何回も言ったはずだ。なあ?」
「...っ...う...」
「泣いても駄目だ。」
「だって...っ」
「だって?」
ひくひくとしゃくりあげながら麗は小さな口を開いた。
「ぼく...っ、しーの...うさぎさんっ、から...」
「あぁ」
「あのねっ...いいこに...しなきゃ、って...ひっく...ねがい...きらい、ならなっ...で...うぅ...」
いい子?嫌いになる?
「お前何言って...」
「ひぅっ...ちゃ、と...めいわく...っかけない...ひっく...ごめ、なさ...っ」
「何言ってんだ...。麗、分かったから。俺も怒って悪かった。泣き止んでからゆっくり話せ。」
泣きながら謝る姿を見てしまえば、怒っていた気持ちはたちまちどこかへ消えてしまった。拘束していた腕を解放し、向かい合うように麗を膝に乗せて指で涙を拭ってやる。
どんな気持ちでいい子になるから、嫌いにならないで、と言ったんだろう。そんなことを言わせたかったんじゃないんだ。
俺はただ、お前に幸せになって欲しいだけなんだ。
「うう...っしぃ...しーっ...」
「ん...ここにいる。」
「ふぇ...っ」
ぐずぐずと泣く麗の背中を撫でながら、考えた。
自分の気持ちを、隠すことなく麗に話そう。
「なぁ...麗...落ち着くまで俺の話、聞いてくれるか」
「んぅ...っ?」
ともだちにシェアしよう!