8 / 114

テイク♂0.再生 お初もの

   片手は飯塚先輩のモノを握っているからいいけど、もう片方はカメラを持っているからどうしても飯塚先輩の手を誘導して俺の手の上に置くことが出来ない。  まだ理解していないこの人には口説明をしてヤってもらうしかない。  この時の俺はカメラについている小型な画面越しで飯塚先輩を見ていたが、飯塚先輩は戸惑いながら俺をちゃんと見ている。  今の画面越しからでも、その時に貰った視線からでも、どうしたらいいか全くわかりませんって感じの目。 〝トモくん、俺のこの手を握ってみてください。両手でもいいよ。それで俺の手を掴みながら上下に、気持ち良いところを擦ってみ?違和感はしかたないので、我慢です〟 〝……〟  敬語とタメ語の混ざり具合。画面に映る俺の手にソッと重ねてきた飯塚先輩の手。  よくよく見ればまた震えていて、頑張ってる感が伝わる。  片方は俺の手首に、もう片方は手の甲を全部包むように重ねてきた。そしてなにも言わずに始まる扱きタイム。  さ、さ、さ、と無のままに上下される俺の手。  カメラは飯塚先輩に向けるが、当の本人も気持ち良さがわかってないみたいで眉間にシワを寄せるばかり。グッとくるような表情はしていなかった。 〝自分の気持ち良いところを責めるんですよー?〟 〝わかっ、てる……〟 〝あ、人の手を握りながら自分で動かした事がないのか。そりゃ気持ち良いかわかりませんよね〟  動かされてる手をぎゅ、と少し強めに握れば飯塚先輩の手が止まって、俺の手も止まった。  急な刺激に躊躇したのか震える図が画面に映されている。  そこに俺は刺激されたんだろう。  添えられた先輩の手を構わず俺の手で動かしながら先っちょを爪立ててみると、面白いほどビクついた体にカメラがブレる。 〝ぁ、んぅッ……!〟  ガシャンッーー。  可愛らしい声がカメラの中から聞こえてきたと同時に、驚く暇もないほど酷い音も聞こえてきた。  俺の手元にあったビデオカメラが、今はない。 「あーあ、飯塚先輩これ高いんだからー」  ビデオカメラが吹っ飛んだところに目を向けながら言えば、睨むように『……再生すんな』と力なく口にしていた。  おぉ、怖い怖い。  受けの痛さなんて知らないし知る気もないが、飯塚先輩の表情でやっぱりそうとうツラいものなんだなとわかる。  立ち上がりたいのに立ち上がれずベッドに横たわる気持ち、俺を殴りたいのに殴れない気持ち、吹っ飛ばしたカメラをぐちゃぐちゃに壊したいのに壊せない気持ち。  どれも理解は出来ないがわからなくもないような気もする、と曖昧な気持ちに俺はとりあえず苦笑いを浮かべとく。 「よっ、と……でもこれ、最初から誰かをハメ撮りするために買ったわけじゃないんですよ。両親のために買ったようなものなので、壊されたらちょっと悲しいかな」  俺は立ち上がり、飛ばされたカメラを拾って、またベッドに座り直す。  どこにも異常がないか確認がてら、飯塚先輩をハメ撮りしたデータをまた再生。 〝ゃ、あっ……んンッ……!〟 〝いてぇッ……よっ、〟 〝はぁ、はぁ……きの、したァ……〟  狂いはなく、映像音声共に乱れていない。壊れていなかった。 「ッ……木下!」 「おっとと……!すみませんすみません!早送りして見てみれば、つい、ね?」  尻が痛いはずの先輩はこの時ばかり上体を一気に起こして、胸ぐらを掴んできた。本気が込められててちょっと首が絞まりそう。  でもまたカメラを飛ばされたらこっちもこっちで本当に困るため、背中の方に隠す。  とりあえず、メモリーカードで保存した飯塚先輩のデータはパソコンに移しておこう。いつ壊されるかわからない隣り合わせはいくら俺でも我慢が出来ないからな。  落ち着いてもらうべく、飯塚先輩の手に俺の手を重ねながらゆっくり胸ぐらを掴んでるのを解いていこう。 「だけど、痛いだけだったでしょう」 「……」  まずは指一本目、クリア。 「ゴムは付けて中出しこそはしませんでしたが、血、ついてましたよ。裂けましたか?」 「……裂けては、ないと思うが……」  そして二本目の指、クリア。 「そうですか。……どっちにしろ痛かったんでしょうが、」  さらに三本目、四本目の指を解くことに成功。  このまま全部の指が終わって、解放してほしいな。冗談抜きで、苦しいから。 「これからも頑張りましょう――ねっ!?」  慰めのつもりだった。  痛いのは今だけだ、と。  これからヤられる側でもだんだん慣れてきますよ、と。  慰めの、つもりだった。  だけどそれは飯塚先輩からしたら琴線に触れたのか超高速拳が俺の目の前にやってきて、すかさず避けてはその拳を押さえる。 「いい加減にしろよ」 「やっ、だから、先輩おれの事好きなんじゃ……!?」  そして好きだからこそ条件付けてビデオの許可をいただいたんじゃ……。 「言葉を選べ」  そう言った飯塚先輩の表情はどこか悲しそうなものに見えたけど、俺は気付かぬふりをしといた。  

ともだちにシェアしよう!