いつだったか、彼女が出来た時の悩みを聞いた事がある。 　ひどい話、当時は一分も持たなかった、と言ってたからさ。もし仮に締め付けの良さでイったなら、友樹のなんか三擦り半でイっちゃうだろ。 「未知の世界はお前に厳し過ぎるぞ。ねぇ？トモくん」 「……っ」 　ピン、とおっ勃ててる友樹のモノを指で突く。 「……わかったよ」 「わかったつーか、あまり磯部には拒否権がないというかー？」 「木下って意外と鬼畜なわけ？」 　失礼にもほどがある言葉だ。 　けど欲には逆らえないのかしょうがなく、といった感じで磯部は0.09ミリのゴムを取り出し、なんとなくの勘でサイズを選んだそれはぴったりにハマったらしく、完璧。 　最初の全体図を撮るために友樹のそばにいた場所から離れて両手でカメラを支える。その一瞬一部をブレさせないためだ。もちろん手ブレ補正は設定しているが、それ以上に。 　念には念を。 「木下、このローション使っていい？」 　二人の近くにあったハニーローションとは違う、最初辺りに出したアナニー用のローションを指差しながら聞いてきた磯部に俺はなにも言わずオッケーマークを出した。 　今回は俺の声が入りまくってるけど本番ぐらいは静かにしていないとな。 　ゴムについてるローション、プラス、どどどっと絞り出したローションは磯部のモノと友樹の穴に塗りたくられる画が撮れる。 　その時、ローションの冷たさで顔を少し歪めた友樹も見逃さずに小型画面越しで確認出来たが、ちょっとその表情が好きになりそうだ。 　パソコンで転送したあと拡大してよく見とこう。 「せ、先輩、付き合ってくれてありがとうございますっ」 　ぬちゃ、と磯部のチンコが友樹の穴にくっついた時の音が立つ。 　この第二準備室で響き渡ったと感じた俺の聴覚は、意識し過ぎてるからだろうか。ジッとなにも言わない友樹に画面内で映る友樹の横顔を見る。 「ん……？先輩、なっ――ゲホッ！」 「――あ」 　思わぬ光景に、俺の声が録画内に入ってしまった。 「はやく挿れるなら挿れろよ、ド下手」 　それでいてキツい目付きに変わった友樹。磯部を殴った、友樹。 　なぜ殴ったのか……ヤる前に手をあげるなと言ったんだけどな。まぁ磯部の首に手刀打ち(しゅとうう)したから殴ったというよりは振ったというか……チョップって結構、痛いんだぜ？ 「飯塚先輩っ、もう、マジどうしよう……！」 　ヌチヌチと先っぽを挿れたり出したりの擦り程度。 「ん……チッ、はやく終われよ……」 「はぁーい」 　ナチュラルに友樹の手を繋いだ磯部は舌打ちされたと同時に見るからに硬そうな磯部のモノをグッ、と挿れ始めた。 　急だったことに体が反り上がり、挿入された時の喘ぎが出ていなかったけど、息でも飲んだか？ 　右ダイヤルをゆっくり回しながらのズームアップ。 「うはっ……きっつ」 「は、ぁ……ハァ……」 　今思った。 　磯部に正常位は正解だったのか、どうか。 「先輩すみませんっ、結構キモチ良いから、動きますね」 「ぅあ、んンっ！アッ……！」 　挿れた初っ端から激しく腰を振りはじめた磯部。 　考えてるのか考えてないのかよくわからないが、とりあえず友樹の声の上がり具合と表情を見て良いところを突いてるっぽい。 「はっ、ん、先輩って感じやすいの？良いカラダしてるし……」 「んぁ、うッ、せぇ……！」 「はぁはぁ、ゴム、こっちで正解だったわッ」 　大きく揺らしながら磯部は男同士の行為に喜んでいる様子が撮れる。けど、やっぱ女とヤる感覚も抜けていないのか？ 　スルッと制服のシャツの中に手を忍ばせる磯部。捲れた時の友樹の腹筋は傷痕とともに綺麗だと思ってしまった俺。 「あぁ、ん！てめ、そこはっ、んん……！」 「へ？あ、なんですか？んー？」 「ふぁ、ぁぁッ、やめっろ……！やぁ、あ！」 　バカな磯部でもコッチについては勉強よりもヤっていたからか、わかっているらしい。 「先輩チクビ感じちゃう系？うははッ、ん、どーりでシマるわけだ……」 　でもそれは女の場合。磯部が今抱いてるのは、男。 　同じ腐ったものが好きだからしょうがないが普通に考えると、男が乳首で感じるなんて思わないはずだ。俺が乳首で感じないから。 　確信犯でもヤってる感覚が女と変わらないとか言ったら殴っとこうかな。 　ビデオカメラには淡々と行われてる画でも俺の目にはしっかり生々しく、興奮するリアルがうつされている。 　ただまぁ、ひとつマイナスになるとしたら、磯部と穴兄弟になってしまったということだ。そこまで気にしてないんだけどな。 　よくよく考えればテッちゃんとも穴兄弟？ 　うわぁ、それはちょっとなー。 「はっはっ、飯塚センパ、んんっ……イっちゃいそッ」 　これからも穴兄弟が増えるんだろうな。 「くっ……ぁ、がっつきすぎだ……！」 　でも友樹ってばイイ反応するからなー。 「だって、かわいぃ……はぁ、」 　小型画面いっぱいに映されているのはもちろん磯部のモノが出し入れされてる友樹のソコ。ぐちょぐちょと鳴る音はローションのおかげとわかっていても違う連想をしてしまい、期待する。 　二人ともゴムをつけているから我慢汁で音立てが大きく聞こえてくる、なんて展開は絶対にあり得ないことなんだけどさ。 「せんぱい、センパイ、やっばいっ」 「んんんッ……！は、ンぁ……！」 　そろそろ終わるだろうと。 「いーづかっ、せんぱい、」 　そう思っていた。 　ズームバックで再び二人の全体図をカメラにおさえこみながら磯部のナチュラルさは滑るように不自然な動きがなく、友樹の頬に手を添えて――顔を近付けた。 　お、っと……チューとは。 　テッちゃんですら後頭部だったっていうのに、そこはさすがというべきかもしれない。 　またまた右ダイヤルでアップされた友樹と磯部の横顔。途端に見える赤い舌もこれまたエロい。 「はあっ！テメェなにすんだよ！」 「え、いや、雰囲気は合ってんじゃっ……ん」 「くそっ……んんッ、うあ……！」 　キスした磯部を突き飛ばす勢いで肩を押しながらも磯部の腰は止まらず、口を腕で拭いながらも気持ち良さからは逃げれないらしい。 　もうそろそろトモくんは限界か。 　頬に伝った一筋の涙に、俺の口元が緩んだ時、 「んぁ、おい……あゆむっ！ん、」 　随分、ハッキリした声で名前を呼ばれてしまった。 　驚きはあったものの俺は画面越しで友樹を見ながら首を傾げる。友樹もこっちを――カメラ目線で――見てるんだ、俺の傾げにも気付いているだろ。 「てめぇ来い……！そば、に、来い！」 　乳首をコリコリ触りながら腰振る磯部にすぐ『止まれ、カス、っ』と叫んでいたが正直者の磯部は首を横に振りながら止まる事は絶対にしないというオーラが放っていた。 　早漏でもゴムが厚いおかげか、もしくはそのコンドームと相性がいいのか、射精せず長期戦を堪能している磯部。 　余ったあの0.09ミリは磯部を譲ろう。 　なんて考えながら俺を呼んでるトモくんに近付いた。俺の声は極力入れたくないのに。 「どうしましたか？気持ちイイでしょ――うわッんん」 　煽るように話しかければ突然、胸ぐらをぐわっと掴まれて、噛み付くようなキスを友樹にされて、持っていたカメラが驚きの方向に傾いた。 「はあ……ん、木下いいなぁ――って締まっ……！？」 　と、同時に、二人はイってしまったらしい――瞬時にも不覚。 　友樹自身、全力で走りながら口を塞がれたまま感じて果てたようなもんだから舌が絡みついてくるなかでも吐く息が激しい。 　それでもやめずにまだキスしてる俺達ってどうよ。 　こういうの、好きだから俺はやめないけど。 「ん、ちゅっん……っ」 「あー……先輩おれもしたかったー……」 　一生懸命、俺の舌に纏わりつこうとついてくる中で磯部は、イきはしたがまだ抜いてないモノに自分の眉をピクつかせてしまう。 　はやく抜けよ、と。 　ゴム越しでイったとしてもずっとナカにいていいもんではない。 　右手で持っていたカメラは驚きの方向に傾いていたものの一応、友樹の萎えた下半身丸出しで撮られているのが小型画面から確認出来た。 「トモく、ん」 「ぁぅむ……んん、はぁ、」 　やっと離れた唇に少し垂れ出てしまったよだれを友樹はペロッと舐めてくれてようやく画面越しでなく、俺の目と友樹の目が合う。 　友樹の口のナカ甘いなあ……あのハチミツまだ残っていたのか。 「イっちゃいましたね、トモくん」 「……」 「ダンマリとかはやくないですか？」 　苦笑いを漏らしながらも最後におさめるものは友樹の表情。 ――はい、録画終了。