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白状
「磯部、いい加減抜け」
いつまでもその格好のことに、だけど迎い挿れた生身の感想を聞きたいがために、俺は呆れた溜め息なんぞ吐けなかった。
俺の注意に磯部は慌てながらもゆっくりモノを抜いてコンドームを外す。抜かれた時、友樹は少し感じちゃったのかぎゅっと俺の制服を掴んでいたけど、大丈夫か?
――って、俺が心配したところでヤらせたのは俺なんだけどな。
「友樹もどう?起きれそうですか?」
「うるせぇ……」
「その切り替えのはやさ、さすがですよ」
上体を起こした友樹を支えて、丸出しの下半身を着ていた俺のカーディガンベストで隠しながらゴム越しでイった使用済みのゴムを丁寧に外しておく。
その一連を穴があきそうなほどの視線でずっと見ていた磯部。
フルチンではないものの、バカみたいに突っ立ってる姿には笑いそうになるな。
どうした、磯部。
「……木下と先輩の関係って、いったいなに?」
そして指を差してくる。
「指差すな」
「いやだって、トモくんとか呼んでたし……それと木下のあの口調とノリは本当になんなんだよ」
純粋な疑問なんだろうな。
指差しをやめたあと、腕を組みながらその場にしゃがむ磯部は興味だけはある化学の実験を見ているような目。実際は爆発しかねない頭持ちだから見る側だけの扱いだがな。
「口調については、テンションが上がると俺はああなるってだけ」
「うっそだー」
ほんとほんと。
適当そうに見えてちゃんと返事をする俺に磯部はまだ疑いの目を俺に向けてくる。つーか口調についてじゃなくて……友樹からの視線もぶっちゃけ痛いぜ。
ちゃんと言うからさぁ?
「磯部、お前さらに興味出た?」
「へっ、えっ、あーっと……そのー……」
バカみたいに騒ぐいつもの磯部じゃないから絡みづらい。とはいえ、ここまで来てまだ葛藤するか……。そこで軽蔑する奴ならここまで腐ったりしないと思うけど?
うじうじする磯部に若干イラつきつつ、俺はネタばらしをするべく、友樹の触り心地の良い髪を撫でながら頭を引き寄せた。
「心配するな、磯部。俺達は“親友”だろ?引かないさ」
引き寄せた頭に良い匂いのするシャンプーをかいだあと、俺は躊躇いもなく友樹の頬をかぷっと噛み痕をつけて、一言。
「俺と友樹なんて、付き合っちゃってるから」
腐は腐でもリア腐な存在になっちまったよ、って。
アメリカンジョークというのは不謹慎なネタをフランクに、それこそ盛大に笑いながら言うものだ。
友人ジョニーの浮気悩みを聞きながらマイケルが〝俺も実は浮気しちゃってさ、ヤバいよなぁ。でもキャサリンは最高なんだよ、HAHAHAHA!〟なんて言ってみたものの、実はそのキャサリンとはジョニーの彼女だったオチなんて、ブラックにもほどがある。
けど、だいたいのジョニーは爆笑しながらこう言うのだ。
――AHAHA! それ俺の彼女じゃねぇか!
まあ幸にも不幸にも俺と友樹のは黒い冗談じゃないんだけどな。
「はっ!?木下と先輩付き合ってんの!?ていうかやっぱり木下ソッチに興味あったんじゃん!」
制服を身に纏った磯部は大興奮。
興味、なぁ……確かに興味でこうなったものでもあるが、好奇心も出たというか……。しかも俺の“興味”と磯部の“興味”は違うぞ。
磯部は本当に、そこにいる男と自分に、男同士に興味があったんだろ?
俺はただの妄想としての不良受けに興味があって、ハメられてる姿を撮っていいかどうかで成り立ったものだ。
そういった結果、条件付きで絡めたら付き合うオチに持っていかれただけで。……でも磯部に言ってもわかんねぇだろうから、
「ま、そうだな、興味があったよ」
こう返しとこうか。
「友樹、これで拭きますからね」
「……」
あとの片付けは友樹の処理だけ。ゴムをつけていたおかげで服などにつかなかった精液。
ここの下半身とローション塗れの尻穴を拭けばいいか。
「んー、俺もついに感化されたのかなー」
「感化されたというか、元から気にはしてただろ。お前」
「え?えー……どうだったか。でもやっぱ見てるとふひょぉぉってなるけど」
「あー、わかるわかる。五十嵐と松村とかたまに見かけると絶対にその場から離れず隠れて見るわ」
「あの二人はもう公認だからどこでもイチャつくしな!あとは王子様である王司!恋仲な噂はそれほど聞かないけど、やっぱ付き合ってる相手とかいるのかね?」
磯部とのこういった会話は頭の良さなんて関係ないから楽しい時間だ。変にイラつかないし、話がスムーズに行く。
躓かずに友樹のモノを拭き終われば最後に多少、乱れた黒髪を整えて制服を着さす。
「王司か……ボロ出さないもんなぁ」
そこで出てきたのは王司の名前。
そういや中沢の同室者になったんだっけ?と、頭の片隅で考えながらもやっぱ王司にはあまり興味ないからスルーしようと思う。
だって王子様キャラとか、腹いっぱいだろ。そこでなにか特殊的なものがあれば興味という興味が出てくるけどな。
王司 雅也という人物に。
「はぁ……俺も付き合いてぇ」
「どっちとだよ」
「んんっ……!こっちッ」
ズボンを穿くために立ち上がった友樹だけど、なんとなくフラついて見えたから俺も立ち上がって体を支えながら磯部に聞くと、親指を立ててきた。
やっと出た白状にニヤつく俺を見逃さないのが磯部の悪いところだ。
そういうのはいいから、もっと別のところで活かせよ。
「なんつーか、ヤっちゃったあとに言うのもあれだけどさ?」
そんな俺と友樹の姿を交互に見ながら違うテンションで口を開く磯部。
「どうして俺と先輩をヤらしたんだよ」
「……」
「……俺の悪い癖的な?」
理解してくれる人なんて一握り。
そう思うと、ちゃんと言ったところで磯部にはまず理解出来てもらえないだろうと答える前に俺の中で自己完結したら、よく意味のわからない返しをしてしまった。
俺の悪い癖と言ったら、勝手にA君とB君を目に入れたら頭の中で妄想を繰り広げながら本人達に『あーしてみて』“こーしてみて”《付き合ったらどうだ?》と一方的になってしまうぐらいのもの。
それで付き合っちゃうのが八割だからだいたいは両片想いで俺がキューピットになるだけの簡単な仕事なんだ。
俺が妄想した組み合わせはだいたい付き合うんだから。
「じゃあ木下は飯塚先輩と自分を含んだ妄想をしたってことか」
なにもない頭をフル回転させた答えをドヤ顔で言い放つ磯部。
違うが、そうしておこう。もうめんどくせぇよ。
「どうであれ、俺と友樹は“カタチ”でも付き合ってるわけだから、今後一切トモくんとはヤるなよー?」
「……」
とりあえず握った友樹との手を磯部に見せびらかす。が、暗い表情を浮かべていた友樹に磯部は気付いたんだろう。
「だから先輩ってば、あんな顔を浮かべ――うッ」
手出しがはやいと、足が出るのもはやいみたいで。
「こいつうぜぇ」
「友樹……横腹回し蹴りはヤバいと思うんですけど……」
説明する暇なく相手を気絶させちゃうから今後が怖い。
常に一緒にいる松村をはじめに中沢の事も友樹には伝えとこう。
俺の親友、三人は絶対に手を出しちゃいけませんよ、って。
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