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余の談
一般的に言われている○○攻めとは。
俺様、浮気、優等生、年上、年下、変態、ワンコ、可愛い、兄弟、ヤンデレ、ヘタレ、平凡、鬼畜、方言、人外、敬語、美人、不良……んー、最後に総攻めが来るか。
ここでショタ攻めなんてものも入って来るんだろうが、パッと思い出せるとしたらこのぐらいだな。
基本的になんでもイケる俺からしたら特定の好きなジャンルはすぐに選べない。が、新しい攻めが出てきたらすぐに好きになる単純脳だ。
美味そうな食いものは必ずしも、美味いとは限らないが。
「……ドM攻めって、少なくね?」
パソコンの前でカチカチッと慎重に検索。だけど少なすぎるジャンルにもう泣きそうだったりする。
聞け、お前等。
あの王子様で、だけどバリタチなんて名を付けられた王司 雅也は実はドM野郎らしいぞ!
と。
「歩、そんな間近だと目が痛くなるぞ」
「んー……」
今、俺の部屋にはちゃっかり友樹がいたりする。けど、そんな相手も出来ないほど俺は忙しいのだ。
ドM攻めとは?
なんてウィッキー先生に聞いてみたがちょっと首を傾げるものばかりだ。ならこれは漫画小説でかき集めて俺の中で素材を増やすしかないだろ。
そう思って検索してみたわけだが……。
「ワンコとの違いがわからない……ヘタレともとらえられる……変態と変わらない……ん゙ん゙っ!」
最大級の掲示板腐りサイトを覗いてもあまり理解されていないジャンルらしい。つまりはマニアックものか。
まぁそうだよなー。ドMなのに、攻めって。
「なぁなぁ友樹」
でももっと、俺的にはマニアック過ぎるというか、軸を超えたというか。
「なんだ」
「俺が指パッチンしたら射精しちゃうようなテク持ってたらどうします?」
誰が聞いてもおかしくなると思う質問。理解されるどころか頭で処理すら出来ていないんだろうよ。
友樹は綺麗な顔を歪めて不機嫌そうな表情を浮かべながら盛大なる『はぁ?』と言ってきた。
マジック攻め、というジャンルをこの間、漫画で見つけてな……。
設定的はこうだった。
世界も認める日本人マジシャンがいるのだが、実はホモで付き合ってる男がいるというもの。そのマジシャンは攻めで25歳だったか。
相手の受けは高校生で歳の差もの。歳の差は俺の好きなものだし、マジシャンという謎の攻めジャンル、そして漫画の作者が前から好きだった人。
この三点で心を奪われて買ってしまった。
最高のステージを終わらせれば次に待つステージがあるみたいで……それがベッドの上でM開脚姿で待っていた高校生だ。
まさかの鬼畜か、なんて思いながらもページを捲れば『マジック、スタート……』とキメ顔で指を鳴らしてバイブのスイッチが入るという遠隔操作。……とか思ったんだけど、違うらしいんだ。
マジシャンは種も仕掛けもちゃんとセットした上で始めたマジックだった。
もうここでわけがわからずもう一度読み直した結果、俺はマジック攻めというマニアック中のマニアックにハマってしまった。
すげぇよ、漫画の世界だからって林檎を持ってきて――これはキミの可愛い乳首ちゃんだ――とか言って撫でたらその受けも乳首で感じたりして。
挙句、ローションからコンドームに変わるマジックを披露した攻めに、受けはすげぇすげぇって興奮してて。
テスト期間も終わって、バカみたいに頭を休めるにはちょうどいい作品だった……。遠隔操作でバイブをやるにしても実際は際どい部分もあるからな。
カッコつけて隣の部屋に閉じ込めた受けを攻めが扉越しにスイッチ押すとするじゃん?
そういうのって無反応の場合が結構あるらしいから……一学年の野郎から聞いた話な。
そんな、マニアック攻め受けに頭を抱えながら妄想に取り組もうとしたら目の前にコトッと置かれたホットミルク。
「……」
「……」
もちろん出してきたのは友樹だ。
俺が変な事を言って狂ったと思ったのか?
「まあ、落ち着けよ」
「……」
俺は落ち着いてる。いつでも落ち着いてるつもりだ。
けどやっぱドM攻めはそんなにないし、そうなるとマジック攻めとかあるわけねぇじゃん!
俺の資料が! 素材が!
妄想として完結出来ねぇよぉぉぉぉぉぉぉぉ!
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