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突如終わる世界

     *   *   *  だらだらだらだらだら。 「……で、どういう事だ?」  冷や汗が止まらない。  だらだらだらだらだらだらだらだら。 「……」  俺は今、松村の目の前で正座をさせられ、縮こまってる。 「おい、木下」  だらだらと、だらだら流れるだらだら冷や汗。……うっかりだ。 「これ見る限り、レイプにならないか?」 「それは断じて違う!」  見付かってしまったのだ。  あの中沢に人一倍心配性を出しまくる松村 平三殿に、ハメ撮り動画が。見付かってしまったのだ。  パニック問題どころじゃない騒動だ……!  なにもやる事がない時間に自分のテスト結果を流し見した後、俺は久々に友樹の処女脱した動画を見ていた。  今日は友樹もいないし、一人部屋であるここは音量を多少気にしながらもイヤホンは付けなくてもいいか、と思い設定したフォルダパスワードを入れたあとプレイヤーを起動。  ハメ撮りをこんなマジマジと見たのはテッちゃんの時ぐらいだったから。  磯部のはまだそんなに見てないし、処女脱した動画は体力もなくベッドで死んだように倒れていた友樹の隣で、撮影した動画を見ていたせいか……ほら、吹っ飛ばされたからさ。  実はよく見てなかったというか。 〝んん゙っ……はッはぁ、〟 〝やっぱりキツいですねぇ、チンコも萎えてますよー〟 〝ひぅっ……!や、め……ッ〟  頬杖をつきながら見てみるが、痛そうな顔してんなぁ。あ、これもしかして涙か?  んー、この友樹は可哀想だ。  なんていろいろ映されてる友樹を見ていた。それこそ今では念入りにほぐしてもらったり、ほぐしてあげたりしてるから痛みなんてないんだろうけど?  というか快感の方が勝ってるんじゃないか?  なんて一人そう思いながら、あとで友樹を呼ぼうとまで考えていた。  だが、その時だ。  アポなしでノック音が三回、さらに聞き覚えのある声。 「木下ぁ、おれー。松村だけど開けてくれー」  もうめっちゃ焦った。  音量は小さめの設定だったが動画的にはもうラストに差し掛かってて、ローションと肌がぶつかる音が大きく、友樹の声なんて痛がりながらも高かったから、聞こえるんじゃないかと、すげぇ焦りながら一時停止を押して右上にある最小化をクリックでタスクバーに閉じさせた。  プレイヤーのアイコンは残ってるが、気にしないだろ……。  二回、三回の深呼吸に無理矢理、落ち着かせて“俺”に戻りながらの『松村、連絡ぐらいして来いよ』と、出迎えたのだ。  部屋に来るのはいいが珍しくも一人だった事に少し驚いた。  別にいいんだけど……あ、松村のやつ勝手に部屋に入りやがったな。――なんて、この時には完全に落ち着いていた俺。  だけどまたすぐに心臓が跳ね上がる。 「ちょっとこれ貸してくれ」 「え」  松村が指差したのは俺がついさっきまで使用していたパソコンだ。  プレイヤーを完全に閉じていない、表示されてるアイコンさえクリックしてしまえば自動で再生されてしまう、友樹との初ハメ撮り。……まぁでも、松村はネットを開いて検索が出来る程度だから平気か。  あぁ、平気にしておこう。  自分に言い聞かせながらの納得先に挙動不審にならないよう漫画を手にして、あまり座らないソファーに腰かけた。でも、やっぱり松村は検索しか出来なから。  それぞれのアイコンを覚えてないから。  タスクバーの一番、右にあるアイコンを、クリックしてしまった、らしい。 〝あ゙ぅ、ああ、んッ……はぁ、いってぇッよ……!きのした!〟 「……」 「……」  音量は、 「……木下」  小さめに設定していたから。 「……」 「お前、これ……え?」  時は流れるがままに。  逃げようにも逃げられない、ハメ撮り結界が張られていて、俺はその場で死んだ。 「松村君、これにはちゃんとした訳があってな、」  そして心が死んだままの正座状態の俺だ。冷や汗がハンパねぇほど垂れてくるんだけど……。  開いてしまったプレイヤーは松村自身、見てられないものだったのかノート式パソコンは畳まれている。畳んじゃえば勝手にスリープモードになるからどこもクリックしなくても再生された動画は一時的に止まるんだ。  そこは知ってて、どうしてインターネットのアイコンマークは知らないんだよ……。あれか?  いつも使う時はだいたい右側にあるのか?  はぁ……久々の正座はツラい。だけど変に口出したら松村にもっと怒られるだろうな……それは嫌だ。  こいつを怒らすと本当に怖いっつーか……俺の周りは怖い奴等しかいないのか?  中沢までも怖かったらどーしよ。 「訳があってこの動画がパソコンにあるとか……お前さ、犯罪だぞ」 「待てよ、なんで強姦前提になってんだよ」 「木下の好奇心は悪いところに出る時があるだろ」  そりゃある時はあるが、常識だってある方だ!  勝手に決め付けられてまさに遺憾の意。もしくは、落ち込むぞ……。 「それに木下は女が対象だろ?なんで飯塚先輩とヤってんだよ。え、これ飯塚先輩と木下だよな?」  なんて閉じられたパソコンを見る松村。言い訳をすると怖いから、ちゃんと正直に説明するさ。  まったく……ヤクザ一家の息子である五十嵐と、意外な一面を持っちゃってる松村の組み合わせは本当によく似合ってるな。 「松村マジで聞いてくれ。確かにハメ撮りはした。つーか友樹――飯塚先輩とヤった」 「……」  浴びせられる視線が冷た過ぎてツラい。  なんだ……親友相手だとここまでメンタル削られるのか!    

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