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拘束談
「髪も乾いたし他ももろもろと出来ましたね」
「っ、なんだよこれ!ここまでしなくてもいいだろうが!」
「おっふ……トモくん暴れないでください、押されてお腹痛くなるっ」
裕希君がいつ来るかなんて知らない。
俺が友樹に大きな声で『準備しましょーねー』と言いながら二階に上がって行ったが、それをどう解釈しようが裕希君次第だ。
とはいえ、俺の行動に嫌な顔をしながらも風呂に入りたいと言うからまた一階に戻ったんだけど。
で、その準備だけど。友樹には目隠しに両手首を拘束した状態になってもらったよ。
やられてる本人は気に入らないみたいで俺が友樹に膝枕をしてあげて、さらに拘束された腕の輪を俺の腰に回すような感じでやり直してあげた。
密着し過ぎて友樹が頭を動かすと俺の腹がグリグリ押されるし、下半身だって擦れることになるからさ。
今回のはちょっと俺も参加する形かもしれない。悲しい事に、ほぼソロプレイだけど。
「トモくんが言ってた、裕希君とキスした相手、やっぱり付き合ってるみたいですよ」
「あ゙ぁ?」
友樹ってば目を塞がれてるからって乱暴な言葉遣いになってるな。……って、それは元からか。おとなしく見えたのは磯部の時から日が経ってるからか?
俺のモノをしゃぶってくれたのは友樹から誘ってきたから、それを撮っただけだもんな。
義理でも弟、名字は飯塚と阿部になってるが数年前までこの家で一緒に生活していた家族に変わりない相手。
やっぱ精神的にクるものがあるだろ?
「チッ、せめて手首のやつは外せよっ」
「この格好がいいんですよー」
友樹を相手にしながらビデオカメラの調整を行う。
今だけは小型画面をこっちに向けて確認しながら友樹を撮れることになるが、俺も友樹も同じ方向に体を向けているせいで、友樹を撮るとなるとレンズの角度もなにもかも逆にしないといけない。
俺も映ってしまうが……これはしょうがない事だよな。裕希君が来たらまた戻すけど、今のうちに恒例の紹介やっとくか?
「はい、じゃー開始。お名前と年齢お願いしまーす!」
「……っ」
「まだ相手来てませんから」
急に始まったのかと勘違いした友樹に髪を撫でながら伝える。
きゅっ、と回されてる友樹の腕に締まる腰や脇腹がくすぐったい。
「なまえはー?」
「……と、も……」
目隠し拘束ってここまで効果があるのか……どこまで怯える姿を可愛いと思わせるのかね、この人は。
「じゃあ歳も言っちゃおうか?」
落ち着かせるためにコメカミ辺りを軽く口付けしながらリップ音を立たせれば『じゅう、はち、』と答えてくれた。
「あ、なに。トモくんってば誕生日もう過ぎてるんですか?」
素で聞いてしまった俺の質問に友樹は変わらず、泣きそうな声で4月7日が誕生日だと言っていた。
「あの――」
そんな可愛らしい会話から、割り込まれた声。
「……ッ」
「……」
「ユウくん!」
ドアから覗くようにしてやってきた裕希君。友樹の格好に驚いてるのか若干、気まずそうな雰囲気を醸し出している。
異様過ぎる空間なんだろうな。
「んじゃ、本人も来たんで始めちゃいましょうか」
「お前ほんと……」
「んー?」
目隠しされてるせいでちゃんとした表情を読み取れないが、たぶん呆れてるんだろうな。それこそ今さらだと俺は思うね。
カメラを持っていない手で裕希君に手招きをすれば遠慮気味で部屋に入ってくる。
弘人君は寝てるみたいで……けどヒヤヒヤするなー。口は出来るだけ塞ぎたくないから、声を我慢してもらうか?
「ほら、そこ座っていいぞ」
「……」
「そんなに緊張しないで、リラックスに」
ガチガチに固まってる裕希君。だけど、なんか、ほら……髪の毛濡れてる。裕希君も風呂に入ってきたとか?
いいよいいよ、マナーがなってるよ。
「トモくん、服着なくてもよかったですね」
「あー、もう外せ。どっちか外せっ」
抵抗するせいでグンッと腰にある腕に力が入って本当に痛ぇ。
外す気なんてないから俺はこの痛さを我慢するけどさ……。
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