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閑話

   話を聞いてみると、古河の実家は喫茶店をやっているらしい。そこで出会ったのがこっちの学校に通う女子大生だとか。  話も意気投合して、お互いそういった相手もいなくて、男子校女子大で出逢いがないから作ろうか、と出来た話。  急遽、決まったこととはいえ古河はその女が気になってしょうがないからもう一度会いたいがために合コンの人を集めてるとか。  それで、俺か。  ここの学校でノーマルとか少ないもんな。  古河と仲が良い奴等も流されてホモ化になり、相手が出来た。最初から誘えなければ、女との交流機会の話をしてるとその恋人相手から睨まれたりするんだとよ。  嫉妬は可愛いなぁ? 「なぁ頼むよー。興味、なくはないだろ?」 「なくは、ないが……」  んー……。 「女見ててもなぁ……俺の趣味に理解出来る子なんてそうそういねぇし」  腐っています、腐男子です。  こんなこと言っても同士じゃない限り笑いながら『なにそれぇ』とか言うんだぜ?  男と男のラブロマンスに興奮する、なんて言っても冗談だと思って違う話にすり替えられる。……すっげぇつまんねぇじゃん。 「マジで頼む!数合わせだけでもいいから行こうぜ!」  それでも、パンッとかわいた音を響かせて古河は手を叩き、体まで折って俺に懇願してくる。  数合わせなら……いや、でもやっぱりなー……。合コンに興味がなくなってきてるのはハメ撮りのせいかもしれない。そこで見れる組み合わせに俺は、満足をしているのかもしれない。  あとは、さっき思ったように俺の趣味という理解をしてくれない女と喋ってても面白くないと感じるまでだ。そこら辺に腐女子がいたらよかったんだが……出てこないのが腐り族。  SNS内にはたんまりといやがるのに。  断る方向で考えていた俺に古河は見破ったのか、いつの間にか上体を起こして松村と喋っていた中沢に『中沢も行こう?ほんと頼むっ!』と、誘いかけていった。  勇気あるなぁ、こいつ。 「中沢は人と接するのが嫌いって松村から聞いてたけどさぁ……お願いしますぅ……!」  ぺたぁ、と地に頭をぐりぐりつけて願う古河の姿が目に入る。こいつ……そこまでして行きたいのか!  どんだけその女子大生に惚れ込んでんだよ。  会いたい気持ちもわからなくはないが……あー、なんか笑いそう。 「中沢だって俺と同じでノーマルっしょ?関わるのが嫌なら木下と同じで数合わせで女の子達の相手しなくていいから!二人が揃えば数は完璧なんだよー……」  必死過ぎて悲しそうな顔をしながら中沢に説得。つーか俺はもう入っちゃってんのかよ。まだ返事という返事はしてねぇんだけど? 「ん……?」  悲しそうな顔をする古河に、どこか焦っているように見える中沢。――チラリと周りを見れば、すぐに納得した。  古河の頭は下がってても、尻は上がっている姿。それだけで“楽しみにしてるんです”と表している。  平凡面を持つ中沢相手にイケメンである古河がこんな醜態を晒しているんだ。そりゃ注目も集まるよなー。中沢って目立つのも嫌いらしいからこの状況が苦しくて耐えきれないんだろ。  おーおー、松村様も古河相手にすげぇ冷たい目線送っちゃって!  中沢、悪い事は言わない。断った方がいいと思うぞ。その流れで俺も断れるはずだから!  というか王司をどうすんだって話だ。 「お願い!」 「……わかったよ」  その言葉に、俺は内心『あーあ、返事しちゃったよ、こいつ』と思いつつ――中沢が行くならいいやぁ――と、軽い気持ち。 「やったぁぁぁ!じゃあ二人とも夕方に学校の方の校門前に集合!松村はお幸せにっ」  あまりの嬉しさからか、すぐに立ち上がって学食から出て行った古河のスピードを計りたいものだ。  でも行くんだよなー。めんどくさいな……今日は友樹を部屋に誘って普通にカメラを回そうかと思ったんだが。まぁ、それは今度でもいいか。 「智志、いくらなんでも……」 「ちゃんと断るっつの……あー、怖かった」  なにこの百合、やっぱり癒しだ。 「えー、中沢が来なきゃ俺も行きたくないんですけどぉ」  なんてかわい子ぶってみたが、なぜか俺にだけ厳しい松村は『木下は行けよ、智志はダメ』という謎の怒りが飛んできた。  慣れたけどな。    

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