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事後余談

  「あー?お前面白いねぇ。顔も俺好み」  跨っていた友樹から離れて俺に近付く男。……そりゃー、どうも?  なんだこいつ、ホモか。  見破りがはやい俺の目も腐ィルターとか言ってんじゃなくてクリアなフィルターになればいいんだけど。  そう思いながら、画面越しに映った、ある物。 「トモちゃん、この子はトモちゃんの友達?」 「……」  ずっと黙って男を見てるだけの友樹に男は『機嫌悪ぃの?』なんて呟いていた。  機嫌が悪いんじゃなくて、あなたの突進があったから驚いてるだけなんじゃないか?  まぁ知り合いなら言葉を交わせばおさまるテンションなんだろうけど。 「二人とも、同じピアスしてんスねぇ?」  とはいえ、ここで流されたら意味不明のままで終わってしまう。どうにかして俺は友樹だけじゃなく注目してもらおうと話題を吹っ掛けた。  それが、ある物。  友樹の三つあいてる左耳のピアスと、男の右耳についてる一つのピアス。  どちらも同じデザインのピアスをつけているんだよ。深くツッコめば、男は右耳だけ穴が開いてるみたいなんだ。 「あぁ、これぇ?」 「……っ」  右耳を指差す男と、左耳を手で隠す友樹。 「俺とトモちゃんが付き合ってた時に買ってペアにしていたピアスだけど、」 『それがなに?』って付け足した、男。――というかこの人、友樹の元カレ!?  どんなタイミングで元カレなんて出てくんだよ……!  つーかもうちょいゆっくりしてたらこの元カレに情事後を見られていたかもしれない、っていう危機を回避してよかった。それとこの人、テンションが俺なみに高い気がする。 「へぇ、友樹の元カレさん?」 「……」  いまだに座りこけてる友樹にカメラを回すと一瞬だけ画面越しの友樹と目が合った。それも本当に一瞬で、すぐ元カレさんに視線を戻していたけど。 「キミ、カメラ持ってなに撮ってんの?てか名前は?」  前からガバッと友樹を映していたレンズ方向を強制的に元カレさんの方に向かされて、ダイヤルも回していない距離がドアップに映る。  認識しきれないのか画面はボヤけてばかりだ。 「キミっつーか……友樹の元カレさんの名前は?歳は?」 「俺?俺は愁哉(しゅうや)で、19。だーいがーくせーいっ!」  それと俺の名前を聞いてくる流れは無視して友樹にまたもやカメラを向けた。  愁哉さん。  友樹の元カレで、つまりはやっぱりホモ。  チャラさが出てるなぁ。まぁ……友樹は俺と付き合う前まで尻穴は処女だったわけだから、このチャラ男が受けだったんだろ。  チャラ男受けか……いつまでもチャラチャラしてて喘ぐ時は喘いで、好き好き言ってるような攻め溺愛系の、チャラ男受けか?  どんなチャラ男受けも俺からしたら、出されて数秒でオイシクいただけるジャンルだな!  当時を考えれば不良×チャラ男だったってことか……。 「んー、騒がしいが、好きだなぁ」  相手が友樹となれば俺だってわかる。  なにかあるたびに愁哉さんは殴られてただろうに。もしくは愁哉さん以外を殴っていたかもしれない。それでいて愁哉さんのノリを考えると……。 「好きって、なにが?」 「え?あぁ、」  妄想中の現実。でも確かにここで妄想するものではないな。  今は人がいるんだから、気をそっちに向けねぇと。 「いろいろですよ!それより友樹?大丈夫ですか?」 「……ああ」  カメラを持つ手とは逆の手で差し出すと、友樹は素直にその手を取って立ち上がった。  本当ははやく寮に戻って風呂に入れさせたいんだけどさ。 「うえぇっ、に負けるとかぁ!」  名前を教えてないからってカメラ君でいくのはやめてほしいな。教える気もないんだけど、カメラ君でいくのはマジでやめてほしいな。 「愁哉、なんで今ここにいるんだよ」 「おぉ、やっと喋ってくれたトモちゃーん」  立つ助けを出した手はまだ離れず、しかたがないから俺は左手で持っていたカメラを、録画開始しといた。  

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