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事後余談

   話はこうだ。  愁哉さんは中学、高校と、あの全寮制生徒だったらしい。中高大の一貫校であるにもかかわらず大学で進路を変更して県外を受験し、無事に合格したとか。  別れた理由も遠距離になるのが嫌だったから、と互いに納得したうえ。――こんな人がいたとは……当時の俺、見逃しすぎじゃないか?  夏休みの愁哉さんは実家に帰ってきて、久々にこっちで遊んでいたら友樹が見えたからタックルしたとか、そうじゃないとか。 「つーか俺とトモちゃんなんてセフレみたいなもんだったなぁ。本当に付き合ってます感があったのは最初の三ヶ月か?」 「……」 「へぇ、告白はどっちから?」  カメラを交互に動かしながら小型画面に映る二人。ぺちゃくちゃ喋る愁哉さんにこれまた黙る友樹。  どうしてここにいるのか、その理由がわかったからだろうけど。 「告白はおれー。だってカッコいいし!トモちゃんが高一の秋ぐらいだったな。突っ込む方だから痛くねぇよ?って誘ったのも俺」 「随分とグイグイいったんですね」  セフレみたいなものだった、といっても愁哉さんが高校を卒業する前まで二人が続いてたのは事実。最初の三ヶ月までが恋人みたいだったと感じてるんだから、事実だ。  楽しい面白い友樹の過去事情につい耳を傾けてしまう。だって不良×チャラ男だぜ?  この関係がもう終わってるとしても、そのジャンルにトキメキを覚えるだろー。このジャンルで漫画小説になにかあったっけ……探すか。 「好みには最初から唾付けときたいだろ?そんなカメラ君にも付けたいんだけどー」  うはははーっと楽しそうに笑う愁哉さんを撮る。撮り続ける。  ありがたくも俺の人生は王司や松村達には及ばないものの、女からも男からも彩るほどモテるみたいだ。でも男を受け入れられるのは、今は友樹だけだからなー。  そんなの本人には言えないけど。 「それは嬉しい。こっちも、考えとくかもしれませんね」  それぐらいの空気は読んどくよ。  日常の常識はぶっ叩き込んでるからさ。  まあ数分前まで野外セックスした人とは思えない考えだから信じられないだろうけど、はははっ。 「マジでー?じゃあじゃあこれ!メッセージIDな!気が向いたら連絡ちょーだいよ」  俺の言葉を本気にしたのか、それともその場のノリで渡してきたのかは知らないが愁哉さんはスマホを取り出して、QRコードを俺に見せてきた。  スマホで使えるアプリは普通のメールよりも楽に使えるメッセージ用のID。まるでチャットみたいにはやく出来るから話題なんだよ。  俺もスマホにインストールしてるから、これはこれでいいかもしれない。  そう思いながら俺は使うかもわからない愁哉さんのIDを読み込んで、追加しといた。  一言メッセは“我慢出来ないっ!”か……ナニが? 「あと、門限あるんで友樹とは今日、遊べないですよ」 「あぁ、そういやあったなぁ……残念。じゃ、また今度遊ぼう、トモちゃん」 『9月いっぱいまで夏休みなんだぜー?』と誘いかけたのに友樹は、うんともすんとも返事してなくて俺自身、苦笑いをしていた。  でも愁哉さんはそれすらも気にせず、ポジティブなのか元気に『夜でも暑いしイラつくよな!じゃ、ばいばーい!』と言って、俺達から去って行ったのだ。  嵐とはあのことを言うのかね。 「……」 「……」 「……」 「……友樹?そんなに野外ハメ撮り嫌でした?元気ないにもほどがありますよ」  続く、無言。  元カレが去っても、喋る気も歩き出す気もないみたいで、愁哉さんがいなくなるまで見届けていた友樹。  まったく反応がないのも、ちょっと困るぞ。 「……ID」  カメラを片手にまだ離されていない手をぎゅっと握られながら、ぼそっと呟いた。  あー、もう。 「ただの挨拶ですよ、挨拶。使い道ありませんって」 「……」  小さい事で妬き過ぎにもほどがあるだろ。――可愛いな。  不安そうに俺を見てくる友樹を最後に録画を終了させて、もう一度帰ることを伝えてから、俺は繋がれている手を引いて歩き出した。  やっぱり今日は友樹を俺の部屋に泊まらそう。  

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