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予断
〝……ッん、んっ〟
〝ただ擦るだけじゃなくて、その陰茎の部分を擦りながらたまに亀頭とか、あー、カリ首を指で遊んだりしてさ〟
〝あの……いんけい……って、なんですか?〟
〝アッ、んん、な、んか……ん、〟
――早送り。
〝うわッ……なんだこれっ、んゃぁ、あっ!〟
〝ほらヒロくん、ここ、チョコがついてるところペロペロしてみ?くすぐったくて友樹兄ちゃん楽しくなるから〟
〝俺もこっち舐めちゃおうかなァ〟
〝大丈夫ですよ、トモくん。小さい子の舌ってすっげぇ柔らかいってウワサですから〟
イヤホンから流れる友樹の気持ち良さそうな、だけど我慢しなきゃいけない声と血の繋がりのない弟の裕希君がローションとともに扱く音と指を突っ込んでた尻穴のナカの音。
加えて血縁関係のある弘人君はチョコソースでかかった友樹の乳首を舐めに舐めまくってて、たまに噛んでるようにもぐもぐと口を動かしてるせいか、とりあえず勃ちそう。
良い出来だ。
〝やあら、アッん!おまえ、ら……!ふッ、ぐぅ……っ〟
拘束された両手は不自由で、目隠しをされてるからそんな弟達の姿も見えずにヤられっぱなしの友樹。
〝あぁん……っ、あゆむ、あぅむッはぁはぁ、んんッ――!〟
冷房がかかってても止まらない汗を伝わせながらイった瞬間が、すげぇクるんだけどさ。どう考えてもこのトモくん、腰を自ら動かしてるよなぁ……。
もう一度、扱かれて掻きまぜられて、吸われて噛まれる三ヶ所を一気に攻められるところまで巻き戻して、再生。拡大にしなくてもわかるほどの動きっぷりだ。
やっぱり弟攻めって需要ありまくりじゃないか……あぁ、なんで俺ってばあそこで素直に引かせちゃったんだろうなぁ!
耳からイヤホンが抜けないように気を遣いながら椅子の背もたれに寄りかかり天井を見る。真っ白い天井は始まる前の映画館みたいで、暗くするとそこに映像が流れるような気がした。
イヤホンをしてるせいか。ドでかくこの動画を真っ白いあの天井で見てみてぇなー。友樹に怒られるからやらねぇけどさ。あの殴りは本当にくらいたくない。
〝ぁぁ……ンっ、ん゙んッあゆむぅ……ケホッ、〟
咳……この動画、もう終わるじゃないか。
夏って本当に切ないな。けど、ここでずっと引っ張っててもしょうがないのはわかる。
裕希君ってすげぇいい子だし、繋がりがなくても俺と友樹の関係に気付いてて、そんでもって最高にカッコいい眼鏡君と『最初に触れて、ヤりたいです』なんて言ってたし。
あの気持ちは俺の交渉でも変わらないだろうな……中学生ハンパねぇ……。
もだもだする俺の中でもう一度、もう一度、と何度も繰り返して見ていた弟×不良くん。今日でこれっきりにするんだ……!
もうあとは二次元ホモに逃げようじゃないか。残りあと少しとなった俺の夏休みは、もう全部BL漫画小説に託そうじゃないか。
そう思いながらまた見ようと巻き戻しをすれば、コンコンッとノック音が聞こえた。イヤホンはしてても今は音が流れてないから、聞き間違いではない。
いざという時のために、また過ちを犯さないために、プレイヤーソフトを完全に閉じて健全な検索サイトを開く。その間に差し込んでいたUSBも抜いて鍵付きの引き出しへポンッ、と。
パソコン内にあるフォルダも全部閉じてパスワードを入れないと開けないようにする。
もう松村みたいに呆気なく見付かって怒られるとか、したくねぇんだよ。
「はーいー」
全てが片付いた時、ノック音から十秒も経ってないこの素早さ。俺ってばすげぇ。それでも普通にしていなきゃバレる。誰が来たかなんてだいたいは予想つくが、バレる時はバレる。
中沢か松村か五十嵐か、友樹か。
この中で一番来そうなのは中沢だが友樹もなかなか来るからな。
がちゃ、とドアノブをひねりドアを開ける。
「うお、新しい傷増えてますけど」
「転んだだけだ」
「うっそだー」
俺の言葉も無視してズカズカと入ってくる友樹。
あぶねぇ……やっぱりプレイヤーでもなんでも片付けといてよかった。
「なにか飲みます?」
「いらねー」
「なにか食べます?」
「いらねー」
「なにかヤります?」
「……」
夏の冗談を言っただけなのに、なんでこんなにも睨まれんだろうな。
用事があってもなくても俺の部屋に来てもいい。――というのは友樹に言わなくてもわかっているみたいで、今回も用事はさほどないけど来ましたって感じだ。
二人掛けのソファーに座って、適当な雑誌を手に取り開く姿に俺も普段はあまり座らないソファーに腰かける。
友樹が手に取ったその雑誌、乙女通信の腐りものなんだけど。
「ここって男子校じゃないですか」
「おう」
「で、全寮制」
「ん、だから?」
「……」
いつも本当に思う事がある。二人掛けソファーをどうして設置されているのか、って。
女子寮ならわかるんだよ。ただでさえよく見るのが腕組んで歩いたり、異常なほどのくっついてたり。俺から見れば母親の影響でレズにしか見えないんだけど、男はどうだ。
それほどくっつかねぇし、腕組みとか普通ならあり得ないわけだ。なのにどうして、よりによって二人掛けのソファーなんだ。
膨らむ妄想はたまにパンクしそうな時があるから困るって話なんだけど。
「なんだよ、続きは?」
ずっと黙ったままの俺にイラついたのか雑誌から目を離して俺を見る友樹。でもこんな話をしたところで友樹が理解してくれるわけがないし、理解してほしいとも思わない。
話すなら磯部や窪田だろうし、つーかあの二人も同じこと絶対に考えてるから。だから別に友樹に言わなくてもいい話なんだよなー。
「友樹って最初から対象は男だったんですか?」
「……それさっきの話と繋がりあんのかよ」
ないです。
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