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余談外

   その後、裕希君がここに来て友樹と話していたのは『あまり痛くなかったんだけど、これっておかしい事?』と、素朴な疑問を聞きたかっただけみたいで。  だけど電話だと今日は両親がいて、弘人君が離れてくれないから喋るに喋れなかった。  俺が念入りにレクチャーしていた事を想像すれば痛いと思うのに痛くなかった自分はおかしいんじゃないか……なんて悩みまくってたみたいで、すぐにでも“経験のある兄”に相談したかった、と。  小型画面に映る裕希君は困りに困った顔をしている。  しかし、話を聞いてて思うのが、そこまで悩む必要性があるのか?ということだ。  まぁ俺は受けなんてヤったことないし、ヤることもないからこんな考えなんだろうけど。 「それで、友樹さんは木下さんと、ヤっていたっぽいから」  なんとなく食堂の前を通ろうとした時の会話が繋がったような気がした。 『……――さん、痛かった?』 『は?』  友樹さん、痛かった?――は?  こういう流れだったんだろ。  あれか、友樹は痛かったのかどうか聞きたいのか。そうかー……。 「友樹はめちゃくちゃ痛がってたけど――っ」 「……」  すげぇ呑気に言ったら隣からものすごい剛球なみの拳が飛んできた。 「……とっ、友樹さん、」 「あっぶねぇ、いや今のは危な過ぎますって……っ」 「……」  そんな殴り掛かってきた本人は俺を見ず、さらに普通の顔をしながらの、振り拳。だから、怖い。――俺が悪いんだけどな。  でも弟くんが悩んでいたからさ!  ちょっと友樹本人より、その時のことを口にしちゃっただけだろー?  つーか受け同士になったこの兄弟に、俺の弟×不良くんというものは完全になくなったよ。もう、1ミリもない望みに光は消えた。  悪かったよ。こんなにしつこくて、しつこい、しつこ過ぎる俺の思いをグダグダ引っ張っちゃってさ。  あーあー、録画終了だ、しゅーりょー! 「裕希君さ、痛くなかったらよかったじゃないか。いつから拡張していたんだよ。もしくは眼鏡君はもとからそういったセンスがあったのか?眼鏡攻め?彼は眼鏡攻めなのか……――眼鏡攻め!」 「うわっ、木下さん?」  バッ、とカメラを抱えたまま立ち上がる俺。 「待てあゆむ、お前それだけはやめろって」  けど、友樹は気付いたみたいですぐ俺を止めに入ってきた。  眼鏡君と裕希君のハメ撮りを、と……さすがの兄貴も黙ってないか?  自分はされてるのに裕希君はダメってことか?  んー……んー! 「でもテクニシャンで眼鏡の友達とか、俺の周りいなかった気がする……」 「いなくてもいいだろうがっ、あほ」  眉間にシワを寄せては不機嫌になる友樹を、録画していないカメラでおさめておく。  そう言われると余計に探したくなるよなぁ、4人目の相手。  メガネ眼鏡めがね……それでいて上手い奴……――ピッ。 「……痛くなくても別におかしくないって」 「友樹さん……」  真面目そうで、ふいに笑った顔が幼く見える男……。 「けど、ヤり過ぎも気を付けろよ?」 「ヤッ……!わ、わかってる……!」  黒髪×黒髪……。 「こんな事、裕希に言っても相手次第だから押した方がいい事なんだが……」 「うん、なに?」  どう考えても俺が考えるプラン、キャスティングでヒットする人間がこの学校にいないんだよなぁ。友樹も友樹でもう処女ではないし。  あの眼鏡君は裕希君相手だからこそ良い男に見えるだけで、きっとただの変態なんだろ。  必死にネットで調べて、まさか裕希君が自分に挿いれたがってるなんて知らないまま実行しちゃって。でも上手かったらしいから成功したという形で、彼は喜んでいるんだろうよ。  うわー、泣けるなー!  眼鏡君と裕希君ってばなかなかの純愛だ。  ウマ過ぎる……やっぱカメラで撮りてぇなぁ。 「中出しは、させんじゃないぞ」 「う、うん、もちろん!お腹くだす可能性があるんだよね?」  そして頷く友樹。  密かにもう一度、していたが、この兄弟やっぱ可愛いわ。中沢と松村なみの受け受け同士だぞ。  かーわい。  心の録画もしておこう。  

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