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通じる余談◎
「……へぇ、トモちゃんって掘られてたんだ」
「どうします?一応、テッちゃん――鉄野先生に掘られましたって情報入れときますぅ?ふはっ」
「鉄野が!?……んー、でもなんか嘘っぽいなぁ」
察しの良い男だ。
まぁ処女をいただいたのはこの俺だが、今はそういう話をしなくてもいいだろう。ついでに付き合ってるなんてネタバレもやめよう。
ずっと動かないカメラの手。撮り続けるスマホ画面はもう真っ暗だ。すっ、と指で触れれば光ってまた同じ表示があらわれる。
変わらない表示に、変わる通話時間。もう20分も経っている。
「まっ、今だけは友樹の初体験相手はテッちゃんってことで」
「木下くんもトモちゃんとヤったとか?」
んー。
「どうしますか?ヤりますか?ヤりませんか?」
「え、ちょっと、」
愁哉さんの質問に答えなかったところで少しだけ不機嫌になったような気がした。
本当は気持ちまで寄り戻したいんじゃねぇの?
体だけとか言いつつ、好き合って愛し合いたいんじゃねぇの?
でも、ざーんねんっ!
友樹はこんな俺でも、俺の事が好きみたいだから!
「愁ちゃんは、」
「元カレって呼んだり、愁ちゃんって呼んだり――「友樹を抱くー?抱かなーい?」
「……」
チャラ男ビッチ受けなんて、もうちょろいチョロイ。
「……ほんと、抱けんの?トモちゃんのこと」
抱・け・ま・す・よっ!
「もちろん!愁ちゃんの息子さんで突っ込んで突き上げてイかせてあげてよ!」
「木下くんのテンションとかイマイチわからないなぁ」
こういった雰囲気でカメラを持つと、みんながみんな変わった俺に目を丸くする。
テッちゃんは純粋に驚いていたし、磯部はいつもの俺じゃない俺に驚いていた。裕希君にかんしては論外でも、ゴリ押しの人間に――つまりは俺に――驚いていた。
愁哉さんの場合はどんな反応だろうな?
声からして嬉しそうな、でも複雑そうな。
ビッチ受けには見えない表情をしてたりー?
ま、そこもどうでもいいんだ。こんな感じの愁哉さんなら友樹を抱く気でいるだろう。
はいはい交渉成立!
次! 俺の本番!
ビデオカメラの許可だ。
「愁ちゃん、」
「なんだよー」
機嫌が良いのはわかった。わかったから、俺相手に猫なで声はやめてくれないか?
俺じゃなく、誰かにその声を晒すなら可愛いから。あぁ、この人はやっぱり受けなんだな、って納得するから!
スマホ越しで苦笑いを浮かべる俺は誰もいないのに小型画面を見続けて話しかける。撮ってるものを見たって、スマホしかないんだけど。
「日時や場所などは、こっちが決めてもいいかな?」
「あぁ、いいよ。基本、俺はいつでも空いてるから」
「それはよかった」
本当によかった。
ちょっとまた準備をしたいものがあったし、時間をくれて、よかったよ。
ギュッ、と握るカメラ。ドキドキが鳴り止まない俺の心臓。
わかっている言葉でもなかなか緊張するな……。
「愁ちゃん、そのセックス俺にも見せてよ――とか言ったら?」
随分、回りくどい言い方だと思った。どこか遠慮している俺だけど、相手が相手だからだろうか。
友樹の元カレというパワーワードって、もしかしたらどの相手よりも、強いんじゃないか?
うおぉ、鳥肌……。
「なんだそれ、視姦?それとも3P!?」
「うははっ、テンションたっか!」
「だってだってー」
また楽しみだす愁哉さんは一段と声が高くなったような気がした。
今までにしろ、それに近い感じだったからな。俺が相手の時、本当の意味でのハメ撮りで動画を見返しても疑似体験しているような目線。
他の奴等の時もなるべくヤっているような目線撮影をしていてもやっぱり友樹の他に、相手も映る場合があるから。だからといってそれに萎えるかといったら、違う。
むしろ俺が映った方が萎えるな!
間違えて映った場合は編集か指で隠しながら見続けるしかない。
「視姦というより、なんかなぁ」
「3Pなら俺はトモちゃんに突っ込んで、木下くんが俺のナカに突っ込んでほしいよ」
なんて激しいんだろうか!
さすがビッチ!
さっきの複雑さがなくなってる。
最初から、ナニかを期待していたりして、な。
「んー、どうですかね?とりあえず――友樹と愁ちゃんのセックス行為をカメラで撮らせてよ」
もちろんネットになんか流さない。俺個人の趣味として撮るだけだ。大丈夫だ、顔はなるべく映さないし、友樹もそっちの方が興奮したりするから。
「はははっ、それ、AV撮影かい?」
「じゃあそれに似たようなもので、どうですか?」
軽いノリでもう一度、聞いてみると愁哉さんは嬉しそうな……だけど興味津々なノリで――カメラの件も、いいぞ――と、軽快な返事をくれた。
「あざーっす!さすがですね、元カレさん!」
「あれ、また元カレ呼び?てか木下くんってばやっぱりトモちゃんの事、知り過ぎな気がする」
んー。
「じゃあまた連絡しますね!あー、夏休み明けの休日になるかもなぁ……。はやめに連絡しときます!」
そう言って、まだ話しかけてきそうな愁哉さんの声をブチッと切って遮る。
トモくんにはいつ報告しようか?
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